マンション管理に関わっていると、
「修繕積立金が足りない」
「このままだと将来の大規模修繕工事が厳しい」
と言われる場面があるかもしれません。
そのとき、多くの管理組合で検討されるのが、
修繕積立金の値上げです。
しかし実際には、
- どのタイミングで検討するの?
- 誰が決めるの?
- 総会で反対されたらどうする?
など、
悩む理事会も多いのではないでしょうか。
特に難しいのは、
単に金額を決めることではありません。
最大の壁は、
住民の合意形成です。
この記事では、
- 修繕積立金値上げが必要になる理由
- 検討開始のタイミング
- 総会決議までの流れ
- どのフェーズで失敗しやすいか
- 合意形成のポイント
について、
初心者にもわかりやすく解説します。
■結論|修繕積立金値上げは金額より“合意形成”が難しい
まず結論からお伝えすると、
修繕積立金の値上げで最も難しいのは、
金額設定そのものではありません。
難しいのは、
なぜ値上げが必要なのかを住民に理解してもらい、合意形成すること
です。
どれだけ正しい計画でも、
- 説明不足
- 準備不足
- 情報共有不足
があると、
総会で否決される可能性があります。
逆に言えば、
丁寧な準備と説明ができれば、
合意形成の成功率は大きく上がります。
■なぜ修繕積立金の値上げが必要になるのか
修繕積立金の値上げが必要になる背景には、
主に3つの理由があります。
- ■工事費が上昇している
- ■長期修繕計画が古くなっている
- ■当初設定額が低すぎる
- ■長期修繕計画を見直したとき
- ■大規模修繕工事が近づいたとき(大規模修繕工事が完了した時)
- ■修繕積立金不足が明確になったとき
- ■STEP1 長期修繕計画を見直す
- ■STEP2 資金不足を確認する
- ■STEP3 値上げ案を作成する
- ■STEP4 理事会で方向性を決める
- ■STEP5 住民説明会を行う(最重要)
- ■STEP6 アンケート実施・理事会再審議
- ■STEP7 総会決議で最終決定
- ■フェーズ① 長期修繕計画見直し・資金不足確認段階
- ■フェーズ② 理事会審議・値上げ案作成段階
- ■フェーズ③ 住民説明会段階(最重要)
- ■フェーズ④ 総会決議段階
- ■値上げの必要性を丁寧に説明する
- ■複数案を提示する
- ■アンケートで意見を把握する
- ■早い段階から情報共有する
■工事費が上昇している
近年、
建築業界全体で工事費が上昇しています。
背景には、
- 建築資材価格の高騰
- 円安
- 人手不足
- 物流費上昇
などがあります。
以前作成した長期修繕計画では、
現在の工事費を想定できていない場合も少なくありません。
■長期修繕計画が古くなっている
長期修繕計画は、
一度作ったら終わりではありません。
建物の劣化状況や社会情勢によって、
前提条件が変わります。
そのため、
定期的な見直しが必要です。
※5〜7年程度で見直し推奨
■当初設定額が低すぎる
新築分譲時は、
修繕積立金が低く設定されているケースもあります。
これは販売時の見え方を良くするためです。
その結果、
築年数が進むにつれて不足が表面化するケースがあります。
現在では、国土交通省のガイドラインも整備され、
マンションの修繕積立金に関するガイドライン
「段階増額積立方式」における適切な引き上げ方の考え方が示されており、
ガイドラインないでは、
【段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合
の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計
画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。】
と示されています。
■修繕積立金の値上げ検討はどんなタイミングで始まる?
値上げ検討が始まるタイミングは、
主に以下の3つです。
■長期修繕計画を見直したとき
もっとも多いケースであり、
既存の長期修繕計画上で、修繕積立の値上げの時期が到来しており、
見直しの結果、
「将来資金が不足する」
と判明する場合があります。
■大規模修繕工事が近づいたとき(大規模修繕工事が完了した時)
工事の具体的な見積取得を進める中で、
想定より高額になるケースがあります。
実務的には、このタイミングで将来の修繕積立金が不足する恐れが出た場合、
大規模修繕工事の検討や実施中に行うのは得策ではないため(理事会・修繕委員が多忙になる)
「大規模修繕工事が完了したら、検討を始めましょう」と提案することが多いです。
■修繕積立金不足が明確になったとき
資金シミュレーションの結果、
2〜3年後に積立不足が明確になるケースです。
この段階まで放置すると、
選択肢が減りやすくなります。
早めの検討が重要です。
■値上げ検討から総会決議までの流れ
修繕積立金値上げは、
一般的に以下の流れで進みます。
長期修繕計画見直し
↓
資金不足確認
↓
値上げ案作成
↓
理事会審議
↓
住民説明会
↓
アンケート実施
↓
理事会再審議
↓
総会決議
それぞれ見ていきましょう。
■STEP1 長期修繕計画を見直す
まずは、
現状把握から始まります。
将来必要になる修繕費を整理し、
資金計画を確認します。
主に、外部コンサルタント(設計事務所等)や、管理会社が
行うことが多いです。
■STEP2 資金不足を確認する
不足額を明確にします。
重要なのは、
- いくら足りないか
- いつ足りなくなるか
を把握することです。
長期修繕計画自体も、先延ばしにできる修繕はないか、
過剰になっていないか確認しましょう。
■STEP3 値上げ案を作成する
ここで具体的な値上げ案を作ります。
例えば、
- (現状が段階増額積立方式であれば)均等積立方式にした場合の積立額
- (現状が均等積立方式であれば)段階増額積立方式にした場合の積立額
- 計画期間末に残高が黒字となる場合の積立額(計画期間中に赤字となる期間があることもある)
- 計画期間中に一度も残高が不足しない場合の積立額
- 借入も想定した場合の積立額
など、上記から3パターンくらい選択して
複数案を検討します。
■STEP4 理事会で方向性を決める
理事会内で方向性を整理します。
この段階で、
理事会の認識を揃えることが重要です。
■STEP5 住民説明会を行う(最重要)
ここが最大の山場です。
住民が気になるのは、
- なぜ必要なのか
- なぜ今なのか
- 他に方法はないのか
という点です。
丁寧な説明が求められます。
説明会では一人一人、家庭の事情や価値観が異なるため
様々な意見が出てきます。
■STEP6 アンケート実施・理事会再審議
住民意見を把握し、
必要に応じて案を調整します。
■STEP7 総会決議で最終決定
最終的には総会決議で決まります。
ただし、
総会は説得の場ではありません。
最終確認の場
と考える方が自然です。
■住民が修繕積立金値上げに反対しやすい理由
住民が反対する理由は、
単純に値上げが嫌だからだけではありません。
よくある理由は、
- 家計負担が増える
- 本当に必要かわからない
- 管理組合を信用できない
- 説明が不足している
といったものです。
不安を解消する説明が重要です。
■修繕積立金の値上げがうまくいかないのはどのフェーズか?
修繕積立金値上げが失敗する原因は、
総会当日に突然起こるわけではありません。
多くの場合、
前段階から問題が積み重なっています。
■フェーズ① 長期修繕計画見直し・資金不足確認段階
この段階で多い失敗は、
- 数字の根拠が曖昧
- 計画が古い
- 工事費想定が甘い
ことです。
ここが曖昧だと、
後の説明で説得力を失います。
■フェーズ② 理事会審議・値上げ案作成段階
ここで多いのは、
- 理事会内で意見が割れる
- 値上げ額だけ先に決める
- 他案を検討していない
ケースです。
住民説明前に、
理事会内で整理しておく必要があります。
また、理事会内で十分な検討を行わずに、
説明会や、アンケート頼みで物事を決めていくと必ず失敗します。
(総会で紛糾します)
アンケートを実施するときは慎重に行いましょう。
(票がが割れたときは、どうやって理事会で決定していくかなど)
私としてはアンケート実施の目的は総会での質問や反対意見に返答するために、
事前に行うコミュニケーションと捉えています。
■フェーズ③ 住民説明会段階(最重要)
もっとも揉めやすい段階です。
よくある失敗は、
- 総会直前に初めて説明する
- 一方的に説明する
- 住民の不安を軽視する
ことです。
説明会は、
住民と対話する場でもあります。
■フェーズ④ 総会決議段階
総会で問題が起きる場合、
原因は総会前にあることが多いです。
- 質疑想定不足
- 説明不足
- 反対意見への準備不足
があると、
否決リスクが高まります。
■合意形成で重要なポイント
では、
どうすれば合意形成しやすくなるのでしょうか。
■値上げの必要性を丁寧に説明する
単に金額だけを伝えても、
納得は得られません。
背景説明が必要です。
■複数案を提示する
比較できる案があると、
住民も判断しやすくなります。
■アンケートで意見を把握する
住民の本音を知ることができます。
合意形成に非常に有効です。
■早い段階から情報共有する
突然の提案は反発を招きやすいです。
時間をかけた情報共有が重要です。
■修繕積立金値上げ以外の選択肢
値上げが唯一の方法とは限りません。
例えば、
- 一時金徴収
- 借入
- 工事延期
- 工事項目見直し
などがあります。
ただし、
それぞれメリット・デメリットがあります。
慎重な検討が必要です。
■まとめ
修繕積立金の値上げは、
管理組合にとって大きな意思決定です。
難しいのは、
金額を決めることではありません。
本当に難しいのは、
住民の合意形成です。
そして、
値上げがうまくいかない原因は、
総会当日に突然起こるわけではありません。
- 長期修繕計画見直し
- 理事会審議
- 住民説明会
- 総会決議
それぞれのフェーズに、
失敗ポイントがあります。
逆に言えば、
各段階で丁寧に進めることができれば、
合意形成の成功率は大きく高まります。
修繕積立金問題は、
どのマンションでも起こり得るテーマです。
だからこそ、
早めの準備と丁寧な説明が重要になります。
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