修繕積立金値上げはどう決める?総会までの流れと合意形成のポイントをわかりやすく解説|26時限目

長期修繕計画

マンション管理に関わっていると、

「修繕積立金が足りない」
「このままだと将来の大規模修繕工事が厳しい」

と言われる場面があるかもしれません。

そのとき、多くの管理組合で検討されるのが、
修繕積立金の値上げです。

しかし実際には、

  • どのタイミングで検討するの?
  • 誰が決めるの?
  • 総会で反対されたらどうする?

など、
悩む理事会も多いのではないでしょうか。

特に難しいのは、
単に金額を決めることではありません。

最大の壁は、
住民の合意形成です。

この記事では、

  • 修繕積立金値上げが必要になる理由
  • 検討開始のタイミング
  • 総会決議までの流れ
  • どのフェーズで失敗しやすいか
  • 合意形成のポイント

について、
初心者にもわかりやすく解説します。


■結論|修繕積立金値上げは金額より“合意形成”が難しい

まず結論からお伝えすると、
修繕積立金の値上げで最も難しいのは、
金額設定そのものではありません。

難しいのは、

なぜ値上げが必要なのかを住民に理解してもらい、合意形成すること

です。

どれだけ正しい計画でも、

  • 説明不足
  • 準備不足
  • 情報共有不足

があると、
総会で否決される可能性があります。

逆に言えば、
丁寧な準備と説明ができれば、
合意形成の成功率は大きく上がります。


■なぜ修繕積立金の値上げが必要になるのか

修繕積立金の値上げが必要になる背景には、
主に3つの理由があります。


■工事費が上昇している

近年、
建築業界全体で工事費が上昇しています。

背景には、

  • 建築資材価格の高騰
  • 円安
  • 人手不足
  • 物流費上昇

などがあります。

以前作成した長期修繕計画では、
現在の工事費を想定できていない場合も少なくありません。


■長期修繕計画が古くなっている

長期修繕計画は、
一度作ったら終わりではありません。

建物の劣化状況や社会情勢によって、
前提条件が変わります。

そのため、
定期的な見直しが必要です。

※5〜7年程度で見直し推奨


■当初設定額が低すぎる

新築分譲時は、
修繕積立金が低く設定されているケースもあります。

これは販売時の見え方を良くするためです。

その結果、
築年数が進むにつれて不足が表面化するケースがあります。

現在では、国土交通省のガイドラインも整備され、
マンションの修繕積立金に関するガイドライン
「段階増額積立方式」における適切な引き上げ方の考え方が示されており、
ガイドラインないでは、
【段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合
の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計
画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。】
と示されています。


■修繕積立金の値上げ検討はどんなタイミングで始まる?

値上げ検討が始まるタイミングは、
主に以下の3つです。


■長期修繕計画を見直したとき

もっとも多いケースであり、

既存の長期修繕計画上で、修繕積立の値上げの時期が到来しており、

見直しの結果、

「将来資金が不足する」

と判明する場合があります。


■大規模修繕工事が近づいたとき(大規模修繕工事が完了した時)

工事の具体的な見積取得を進める中で、
想定より高額になるケースがあります。

実務的には、このタイミングで将来の修繕積立金が不足する恐れが出た場合、
大規模修繕工事の検討や実施中に行うのは得策ではないため(理事会・修繕委員が多忙になる)
「大規模修繕工事が完了したら、検討を始めましょう」と提案することが多いです。


■修繕積立金不足が明確になったとき

資金シミュレーションの結果、
2〜3年後に積立不足が明確になるケースです。

この段階まで放置すると、
選択肢が減りやすくなります。

早めの検討が重要です。


■値上げ検討から総会決議までの流れ

修繕積立金値上げは、
一般的に以下の流れで進みます。

長期修繕計画見直し

資金不足確認

値上げ案作成

理事会審議

住民説明会

アンケート実施

理事会再審議

総会決議

それぞれ見ていきましょう。


■STEP1 長期修繕計画を見直す

まずは、
現状把握から始まります。

将来必要になる修繕費を整理し、
資金計画を確認します。

主に、外部コンサルタント(設計事務所等)や、管理会社が
行うことが多いです。


■STEP2 資金不足を確認する

不足額を明確にします。

重要なのは、

  • いくら足りないか
  • いつ足りなくなるか

を把握することです。

長期修繕計画自体も、先延ばしにできる修繕はないか、
過剰になっていないか確認しましょう。


■STEP3 値上げ案を作成する

ここで具体的な値上げ案を作ります。

例えば、

  • (現状が段階増額積立方式であれば)均等積立方式にした場合の積立額
  • (現状が均等積立方式であれば)段階増額積立方式にした場合の積立額
  • 計画期間末に残高が黒字となる場合の積立額(計画期間中に赤字となる期間があることもある)
  • 計画期間中に一度も残高が不足しない場合の積立額
  • 借入も想定した場合の積立額

など、上記から3パターンくらい選択して
複数案を検討します。


■STEP4 理事会で方向性を決める

理事会内で方向性を整理します。

この段階で、
理事会の認識を揃えることが重要です。


■STEP5 住民説明会を行う(最重要)

ここが最大の山場です。

住民が気になるのは、

  • なぜ必要なのか
  • なぜ今なのか
  • 他に方法はないのか

という点です。

丁寧な説明が求められます。

説明会では一人一人、家庭の事情や価値観が異なるため
様々な意見が出てきます。


■STEP6 アンケート実施・理事会再審議

住民意見を把握し、
必要に応じて案を調整します。


■STEP7 総会決議で最終決定

最終的には総会決議で決まります。

ただし、
総会は説得の場ではありません。

最終確認の場
と考える方が自然です。


■住民が修繕積立金値上げに反対しやすい理由

住民が反対する理由は、
単純に値上げが嫌だからだけではありません。

よくある理由は、

  • 家計負担が増える
  • 本当に必要かわからない
  • 管理組合を信用できない
  • 説明が不足している

といったものです。

不安を解消する説明が重要です。


■修繕積立金の値上げがうまくいかないのはどのフェーズか?

修繕積立金値上げが失敗する原因は、
総会当日に突然起こるわけではありません。

多くの場合、
前段階から問題が積み重なっています。


■フェーズ① 長期修繕計画見直し・資金不足確認段階

この段階で多い失敗は、

  • 数字の根拠が曖昧
  • 計画が古い
  • 工事費想定が甘い

ことです。

ここが曖昧だと、
後の説明で説得力を失います。


■フェーズ② 理事会審議・値上げ案作成段階

ここで多いのは、

  • 理事会内で意見が割れる
  • 値上げ額だけ先に決める
  • 他案を検討していない

ケースです。

住民説明前に、
理事会内で整理しておく必要があります。

また、理事会内で十分な検討を行わずに、
説明会や、アンケート頼みで物事を決めていくと必ず失敗します。
(総会で紛糾します)

アンケートを実施するときは慎重に行いましょう。
(票がが割れたときは、どうやって理事会で決定していくかなど)

私としてはアンケート実施の目的は総会での質問や反対意見に返答するために、
事前に行うコミュニケーションと捉えています。


■フェーズ③ 住民説明会段階(最重要)

もっとも揉めやすい段階です。

よくある失敗は、

  • 総会直前に初めて説明する
  • 一方的に説明する
  • 住民の不安を軽視する

ことです。

説明会は、
住民と対話する場でもあります。


■フェーズ④ 総会決議段階

総会で問題が起きる場合、
原因は総会前にあることが多いです。

  • 質疑想定不足
  • 説明不足
  • 反対意見への準備不足

があると、
否決リスクが高まります。


■合意形成で重要なポイント

では、
どうすれば合意形成しやすくなるのでしょうか。


■値上げの必要性を丁寧に説明する

単に金額だけを伝えても、
納得は得られません。

背景説明が必要です。


■複数案を提示する

比較できる案があると、
住民も判断しやすくなります。


■アンケートで意見を把握する

住民の本音を知ることができます。

合意形成に非常に有効です。


■早い段階から情報共有する

突然の提案は反発を招きやすいです。

時間をかけた情報共有が重要です。


■修繕積立金値上げ以外の選択肢

値上げが唯一の方法とは限りません。

例えば、

  • 一時金徴収
  • 借入
  • 工事延期
  • 工事項目見直し

などがあります。

ただし、
それぞれメリット・デメリットがあります。

慎重な検討が必要です。


■まとめ

修繕積立金の値上げは、
管理組合にとって大きな意思決定です。

難しいのは、
金額を決めることではありません。

本当に難しいのは、
住民の合意形成です。

そして、
値上げがうまくいかない原因は、
総会当日に突然起こるわけではありません。

  • 長期修繕計画見直し
  • 理事会審議
  • 住民説明会
  • 総会決議

それぞれのフェーズに、
失敗ポイントがあります。

逆に言えば、
各段階で丁寧に進めることができれば、
合意形成の成功率は大きく高まります。

修繕積立金問題は、
どのマンションでも起こり得るテーマです。

だからこそ、
早めの準備と丁寧な説明が重要になります。

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