マンションを購入すると、
- 管理規約
- 総会議案書
- 長期修繕計画書
など、さまざまな資料を目にすることになります。
その中でも、
「長期修繕計画書って何を見ればいいの?」
と感じる方は多いのではないでしょうか。
理事会役員になった方はもちろん、
これからマンション購入を検討している方にも、
ぜひ確認してほしい資料があります。
それが長期修繕計画書です。
私は長期修繕計画を、
「マンション版の経営計画書」
だと考えています。
企業であれば、
- 将来どのような投資を行うのか
- お金は足りるのか
- どんなリスクがあるのか
を経営計画で確認します。
マンションも同じです。
長期修繕計画を見ることで、
- いつ大規模修繕工事を行うのか
- 将来いくら必要になるのか
- 修繕積立金は足りるのか
を把握できます。
この記事では、
国土交通省の長期修繕計画標準様式をもとに、
特に重要な
- 様式4-1 長期修繕計画総括表
- 様式4-2 収支計画グラフ
- 様式4-3 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)
の読み方を中心に解説します。
この記事を読み終える頃には、
ご自身のマンションの長期修繕計画書を開いて確認できるようになるはずです。
■結論|まずは様式4-1~4-3を確認しよう
長期修繕計画書は数十ページに及ぶこともあり、
最初から全てを理解する必要はありません。
まず確認したいのは次の3つです。
■様式4-1 長期修繕計画総括表
①どんな工事を、いつ実施する予定なのか
②その工事に、いくらかかる予定なのか
③修繕積立金の現行と改正案
④年度収支(その年度における収入と支出の差)
⑤修繕積立金次年度繰越金(計画期間における収入と支出の差)
■様式4-2 収支計画グラフ
収入と支出をグラフ化したもので、いつまとまった支出があるのか、いつ修繕積立金が最小となるのかが可視化されています。
■様式4-3 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)
いつどんな工事が計画されているのか、総括表より詳しく記載されており、
何年後にどんな工事が計画されているかを読み取ることができます。
大量の長期修繕計画書の中でも
この3つを見るだけで、
マンションの将来像がかなり見えてきます。
■そもそも長期修繕計画とは?
長期修繕計画とは、
マンションを長期間維持していくために、
- いつ
- どんな修繕を
- どのくらいの費用で
実施するのかをまとめた計画書です。
国土交通省では、ガイドラインを公表しその中で
計画期間を30年以上とすることを推奨しています。
※大規模修繕工事が2回計画される期間としています。
なぜなら、
マンションは建てたら終わり、買ったら終わりではなく、
継続的な修繕によって価値を維持していく建物だからです。
■企業でいう「経営計画書」に近い存在
私は理事会の皆さまへ説明する際、
長期修繕計画を
「マンションの経営計画書」
と表現することがあります。
例えば企業であれば、
- 設備更新
- 建物改修
- 将来の投資
を計画します。
マンションも同じです。
- 外壁改修
- 屋上防水
- 給水設備更新
- エレベーター更新
などを将来計画し、
そのための資金を準備していきます。
つまり、
長期修繕計画を見れば、
そのマンションが将来どのような維持管理を目指しているのかが分かるのです。
■国土交通省の標準様式とは?
長期修繕計画は、
管理会社や設計事務所によって作成されます。
かつては、
作成方法がバラバラで必要な情報を満足していない、計画根拠が曖昧でした。
そこで国土交通省は、
「長期修繕計画標準様式」
を公表しています。
多くのマンションでは、
この様式に近い形で長期修繕計画が作成されています。
その中でも、
理事会や区分所有者が特に確認したいのが、今まで
- 様式4-1 長期修繕計画総括表
- 様式4-2 収支計画グラフ
- 様式4-3 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)
です。
順を追うごとに解像度が高く(詳細に)なっていきます。
■様式4-1 長期修繕計画総括表の見方|いつ・どんな工事を行う予定なのか
様式4-1 長期修繕計画総括表は、
マンションの修繕スケジュール表です。
言わば、
マンションの将来年表のようなものです。
■まず確認したいのは次回大規模修繕工事の時期
理事会や区分所有者が最初に見るべきポイントは、
次回大規模修繕工事の予定時期です。
例えば、
- 築12年
- 築25年
- 築37年
など、
いつ工事を行う想定なのかを確認します。
もし、
築15年を超えているのに、
次回工事予定が見当たらない場合は注意が必要です。
■どの工事項目が予定されているか確認する
次に確認したいのが工事項目です。
例えば、
- 仮設工事
- 外壁補修工事
- シーリング工事
- 塗装工事
- 防水工事
など。
将来どの部分を修繕する予定なのかを把握できます。
ここで、
「自分たちのマンションに必要な工事が抜けていないか」
という視点も大切です。
国土交通省の標準様式に準じていれば大項目の抜けはないでしょう。
■修繕周期は絶対ではない
長期修繕計画に記載されている修繕周期は、
あくまで目安です。
実際には、
- 建物の劣化状況
- 使用状況
- 気候条件
によって変わります。
そのため、
計画に書かれているから実施する、
書かれていないから不要、
というものではありません。
実際の工事前には各種点検や調査を行い、
建物の状態を確認することが重要です。
▶ マンションの建物劣化診断とは?調査内容とチェックポイントを初心者向けに解説
■様式4-2 収支計画グラフの見方|将来の工事にいくらかかるのか
様式4-2 収支計画グラフでは、
各修繕工事にかかる予定費用と修繕積立金による収入がグラフ化されています。
理事会や区分所有者にとっては、
「マンションの将来の収支計画」
を見る資料と言えるでしょう。
これにより直感的にいつ修繕積立が不足するのか、どの工事種目が支出を押し上げているのかがわかるようになります。
■まずは大規模修繕工事の総額を確認しよう
最初に確認したいのは、
次回大規模修繕工事の総額です。
例えば、
- 8,000万円
- 1億2,000万円
- 1億5,000万円
など、
マンション規模によって大きく異なります。
多くの方は、
「思ったより高い」
と感じるかもしれません。
しかし、
足場工事
外壁補修
塗装工事
防水工事
などを含めると、
大規模修繕工事は非常に大きな投資になります。
■工事項目ごとの金額も確認する
総額だけでなく、
どの工事にどれくらい費用がかかるのかも確認しましょう。
例えば、
- 防水工事
- 外壁補修工事
- 塗装工事
- 給排水設備工事
特に
- 給水設備
- 排水設備
- 機械式駐車場
- エレベーター
などの設備更新工事は高額になる傾向があります。
将来的に、
エレベーター更新や機械式駐車場設備や、給排水設備更新が予定されている場合は注意して確認しておきましょう。
■工事費は将来変動する
ここで注意したいのが、
長期修繕計画の工事費は見積もり金額ではない、言い換えると確定金額ではない
ということです。
近年は、
- 建築資材価格上昇
- 人件費上昇
- 円安
- 原油価格変動
などの影響により、
工事費が大きく上昇しています。
数年前に作成された長期修繕計画の場合、
現在の市場価格と大きく乖離していることもあります。
▶ 中東情勢でなぜマンション大規模修繕工事費が上がる?原油・ナフサと建築資材の関係をわかりやすく解説
現状の長期修繕計画が将来の工事について物価上昇を見込んだ計画であるかどうかを作成者(管理会社や設計事務所)に確認しましょう。
筆者の場合は、物価上昇は見込みません。(20年先の物価の上昇率を予測するのは困難なので)
原則、5年程度で見直しをしていくので、その都度単価の見直しを行うことで十分と考えています。
■様式4-3 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)の見方|将来のお金は足りるのか
様式4-3 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)は、
先ほどの総括表よりも解像度を上げて、「工事内容」や「工事金額」を確認するための重要な資料となります。
■修繕積立金残高の推移を見る
まず確認したいのは、
将来の修繕積立金残高です。
長期修繕計画では、
今後30年以上にわたる積立金残高の推移が示されています。
ここを見ることで、
将来どのくらいのお金が残るのかが分かります。
■残高がマイナスになっていないか確認する
特に注目したいのが、
積立金残高がマイナスになる時期がないか
という点です。
もしマイナスになっている場合、
現在の積立金では将来の修繕工事を賄えないことを意味します。
その場合、
- 修繕積立金の値上げ
- 一時金徴収
- 借入
などを検討する必要があります。
■余裕があるから安心とは限らない
一方で、
残高が多く残っているから安心とも言えません。
なぜなら、
工事費単価が古い場合、
将来の工事費上昇が反映されていない可能性があるためです。
そのため、
資金計画だけを見るのではなく、
計画作成時期もあわせて確認することが重要です。
■修繕積立金の考え方は別記事で詳しく解説
修繕積立金については、
非常に重要なテーマであるため、
別記事で詳しく解説します。
▶ 長期修繕計画と修繕積立金の関係とは?積立金不足が起こる理由をわかりやすく解説
■マンション購入前にも長期修繕計画を確認しよう
長期修繕計画は、
理事会だけが見る資料ではありません。
これからマンション購入を検討している方にとっても、
非常に重要な資料です。
不動産仲介業者が提示してくる重要事項説明書には有り・無しの説明義務はありますが、
その長期修繕計画書の内容に説明はないため、
内容自体は購入者自身が取得し内容を確認する必要があります。
(仲介業者を通じて長期修繕計画書を入手しましょう)
■管理状態の良し悪しが見えてくる
長期修繕計画を見ると、
管理組合が将来を見据えた運営をしているかが分かります。
例えば、
- 定期的に見直しされている
- 修繕積立金が計画的に積み立てられている
- 必要な工事が計画されている
マンションは、
購入後も長く住み続ける資産です。
建物だけでなく、
管理の状態も確認することが重要です。
■長期修繕計画が古い場合は要注意
例えば、
10年以上前に作成されたままの計画だった場合、
現在の建物状況や工事費が反映されていない可能性があります。
管理状況を判断するうえでも、
計画の更新時期は確認しておきたいポイントです。
■理事会が最低限確認したい5つのポイント
さて、長期修繕計画書を受け取ったら、
まず次の5つを確認してみてください。
① 次回大規模修繕工事の予定時期、金額
② 修繕積立の推移(段階増額方式の場合)
③ 将来の修繕積立金残高
④ 計画作成・見直し時期
⑤ 将来的な資金不足リスク(修繕積立が最少となる時期)
これだけでも、
マンションの将来像をかなり把握できるようになります。
■まとめ
長期修繕計画は、
マンションの将来設計図とも言える重要な資料です。
特に国土交通省標準様式の
- 様式4-1 長期修繕計画総括表の見方
- 様式4-2 収支計画グラフ
- 様式4-3 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)
を見ることで、
- いつ工事を行うのか
- いくらかかるのか
- お金は足りるのか
を把握できます。
理事会役員だけでなく、
区分所有者やマンション購入検討者にとっても、
長期修繕計画は確認しておきたい資料です。
ぜひ一度、
ご自身のマンションの長期修繕計画書を開いて確認してみてください。
マンション管理について体系的に学びたい方は、こちらの記事もおすすめです。


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