2026年6月12日、マンション大規模修繕工事の談合に関するニュースを目にされたかたも多いのではないでしょうか。
談合というと公共工事で起きる問題というイメージがありますが、実はマンション大規模修繕工事でも過去から問題視されてきたテーマです。
特に管理組合理事や修繕委員会の方にとっては、
「談合って何?」
「本当にマンションでも起こるの?」
「管理組合はどう対策すればいいの?」
と疑問に感じることも多いと思います。
この記事では、
・マンション大規模修繕工事における談合の仕組み
・なぜ談合が起こるのか
・コンサルタントが関与するケースとは何か
・管理組合としてできる対策
について、初心者にもわかりやすく解説します。
■結論|マンションの大規模修繕工事において談合が行われることがある
まず結論からお伝えすると、今回の報道にあるとおりマンションの大規模修繕工事においても談合は行われることがあります。(実際に過去に行われておりました)
特に大規模修繕工事では、
・工事金額が大きい
・理事会は専門家ではない(ほぼ素人)
・コンサルタント(設計事務所などの外部専門家)へ依存しやすい
という特徴があります。
特に今回の報道では、「コンサルタント」が主導して談合を行っていたとされています。
そのため、管理組合としてはコンサルタントに依存することなく、「談合が成立しにくい環境を作る」ことが重要になります。
■マンション大規模修繕工事の談合とは?
談合とは、本来であれば競争によって決まるべき受注者を、受注者側が事前の話し合いによって決めてしまう行為です。
例えば、
・受注予定会社を事前に決める
・他社は受注できない金額で見積を提出する
・順番に受注する
といった方法があります。
談合が行われると、本来働くはずの競争原理(主に価格競争)が機能しなくなります。
その結果、
・工事費が高くなる
・管理組合が適正価格を把握できなくなる
・公正な業者選定が行われなくなる(施工品質にも影響する可能性もある)
といった問題が発生します。
■マンション大規模修繕工事における談合は大きく2パターンある
大規模修繕工事における談合は、大きく分けると2つのパターンがあります。
■施工会社同士で受注調整するケース
一般的に「談合」と聞いて多くの人がイメージするのはこちらです。
複数の施工会社が事前に話し合い、
「今回はA社」
「次回はB社」
というように受注者を決めておく方法です。
受注予定会社以外は、意図的に高い見積金額を提出することで、受注予定会社が選ばれるよう調整します。
主に公共工事などで行われる談合はこのケースが多いです。
■設計事務所・コンサルタントが関与するケース
近年マンション大規模修繕工事において問題視されているのがこちらです。
大規模修繕工事では、管理組合が専門知識を補うために設計事務所やコンサルタントへ支援を依頼することがあります。
しかし、その立場を利用して、
・応募業者の選定
・見積比較
・施工会社評価
などに強い影響力を持つケースがあります。
もしコンサルタントが特定の施工会社へ有利な環境を作れば、公正な競争が行われなくなる可能性があります。
さらに建物劣化調査や設計(数量積算や概算金額の算出、使用の検討)
の一部(もしくはほとんど)を協力や「お手伝い」と称して後々落札される予定の
施工会社に手伝わせるということも横行しています。
今回報道されている事案も、このタイプとされています。
そのほか、近年では施工会社社員が理事役員や修繕委員になりすまし、大規模修繕工事を特定のコンサルタントや施工会社へ誘導するという事件もありました。
■実は以前から問題視されていた
この問題は決して新しいものではありません。
国土交通省は2017年に、大規模修繕工事における設計コンサルタントの利益相反や不適切な業者選定について注意喚起を行っています。(悪質コンサルについて)
つまり、今回の報道によって突然発生した問題ではなく、以前から業界全体の課題として認識されていたのです。
そのため、管理組合としても「うちのマンションは大丈夫だろう」と考えるのではなく、選定プロセスの透明性を確保することが重要になります。
■なぜ談合は起こるのか?
では、なぜ談合は起こるのでしょうか。
背景には大規模修繕工事特有の事情があります。
■工事金額が大きい
マンション大規模修繕工事は数千万円から数億円規模になることも珍しくありません。
利益も大きくなるため、不適切な受注調整が行われる動機が生まれやすくなります。
■理事会は専門知識を持たないことが多い
理事会役員は通常、建築の専門家ではありません。
そのため、
・見積内容
・工法の違い
・単価の妥当性
を判断することが難しくなります。
■業者選定をコンサルタントへ依存しやすい
専門知識が不足するため、どうしてもコンサルタントの意見に頼る場面が増えます。
この構造が、問題を見えにくくする要因の一つになっています。
■参加者全員にメリットがある
談合は、
参加者にメリットがあるから成立します。
例えば、
- 高い利益率を確保できる
- 今回は譲る代わりに次回受注できる
- 営業コストを抑えられる
などです。
メリットがなければ、
協力する理由がありません。
つまり、
参加者全員が利益を得られる構造
となっているのです。
■コンサルタント主導型談合の仕組みとは?
大規模修繕工事の簡単な流れは以下のようになります。
大規模修繕工事の検討開始
↓
管理組合がコンサルタントを選定
↓
劣化調査や設計など(コンサルタントの影に施工会社が入り込んできます)
↓
業者選定:1次審査(見積もり比較:見積価格の調整が入ります)
業者選定:2次審査(ヒアリング:特定の施工会社が選定されるように誘導します)
↓
施工会社 理事会内定
という流れになる可能性があります。
管理組合から見ると、
・フロー自体は適切
・比較検討しているように見える
・複数社から見積を取っている
・プレゼンテーションも行われて、理事会の意思で決定しているように見える
ため、気付きにくいのが特徴です。(というか見抜くのが困難)
■談合が成立するために必要な条件とは?
実は、談合は参加者が数社集まっただけでは成立しません。
いくつかの条件が揃う必要があります。
逆に言えば、
管理組合がその条件を一つでも崩すことができれば、談合リスクを下げることができます。
そのうちの最も効果的な方法をご紹介します。
■談合成立要件の一つ:入札参加者全員が談合に参加すること
談合の成立要件として、入札に参加する施工会社全員がその談合に賛同し協力しなければ成立しません。
管理組合ができる対策
・コンサルタント推薦業者だけに依存しない
→組合からも1社推薦業社を入れる
これだけで、談合のリスクを大きく下げることができます。
■談合防止のポイントは「成立条件を崩すこと」
談合対策というと、
「怪しい業者を探す」
「見積り明細を精査する」
ことを想像しがちです。
しかし本当に重要なのは、
談合の成立条件を崩すこと
です。
一つでも成立条件を崩せれば、談合リスクは大きく下げることができます。
正直、談合されてしまうと見抜くのはかなり難しいです。
■設計事務所・コンサルタント選定時の注意点
■見積金額が安すぎないか
コンサルタント費用が極端に安い場合は注意が必要です。
もちろん安いこと自体が問題ではありません。
しかし、
「なぜそこまで安くできるのか」
という視点も必要です。
価格だけで判断せず、業務内容や実績も確認しましょう。
設計事務所やコンサルタントの報酬体系は
各業務:単価×人日を積み上げた形+諸経費で算出され流のが一般的です。
人日:その業務に1人が1日(8時間)従事する業務量
例)現地調査 3人日→現地調査に1人で3日かかるもしくは3人で1日がかりの業務ということ
また、単価は国土交通省の設計業務委託等技術者単価が公開されており、参考とすると良いでしょう。
この金額と比較して著しく低い場合は注意が必要です。
悪質コンサルタントは業務を受注するために見積書を著しく低く提示し、後々の施工会社からのキックバック等が主な収益となります。
管理組合として、安いコンサルタントを選定したつもりでいたが、結果として知らずのうちに高い金額を支払っていたということとなります。
総戸数50戸のマンションを例にすると
・コンサルタント料が200万円(本来350万〜450万程度が妥当な水準)
・総工事費8000万(140万×50戸=7000万円が妥当な水準とし、
コンサルタントへのキックバックや価格競争が働いていないと仮定し割高)
・コンサルタントのキックバック(約5%)350万※総工事費内に含む
結果として、10%~20%程度割高な工事費となっていると言われています。
■施工会社との関係性を確認する
過去の実績や選定方法について説明を求めることも重要です。
設計事務所に経歴の提出を求める際には、会社としての実績の提出を求め、
マンション名、規模、施工会社名を記載してもらうようにしましょう。
特定の会社に発注が偏っていないか注意が必要です。
なんとなくですが、3年〜5年分くらいを提出してもらうことが一般的です。
■施工会社選定時の注意点
■実は公募だから安心とは限らない
「公募だから公平」とは限りません。
公募だからこそ参加者同士で情報共有されやすい環境となります。
施工会社同士は横の繋がりがあるのが実情です。
公募情報が公開されると「〇〇会社さん、この〇〇マンションの入札に参加するの?」といった
やりとりが行われやすくなります。
なので重要なのは公募かどうかではなく、選定プロセスの透明性です。
■組合推薦業者を1社加える
かといって、公平な業者選定には公募が最有力であることに変わりはありません。
そこで筆者がおすすめしたい方法の一つが、管理組合推薦業者を候補へ加えることです。
コンサルタント推薦業者や公募だけで構成すると、管理組合が比較対象を持ちにくくなります。
組合側から候補を加えることで、
・価格比較
・提案比較
・市場価格把握
がしやすくなります。
結果として、談合成立条件の一部を崩すことにも繋がります。
■談合報道から管理組合が学ぶべきこと
今回の報道を受けて、
「すべてのコンサルタントが信用できない」
「すべての施工会社が怪しい」
と考える必要はありません。
実際には、多くの事業者が誠実に業務を行っています。
しかし、仕組みとしてリスクが存在することも事実です。
だからこそ管理組合は、発注者として最低限の知識を持ち、透明性の高い選定プロセスを構築することが重要なのです。
■まとめ
マンション大規模修繕工事における談合には、
・施工会社同士で受注調整するケース
・コンサルタントが関与するケース
の2種類があります。
また、談合は偶然成立するものではなく、
・情報共有
・受注調整
・利益
・発覚しにくさ
といった条件が揃うことで成立します。
逆に言えば、管理組合がその条件を一つでも崩すことができれば、談合リスクを下げることが可能です。
大規模修繕工事は管理組合にとって数十年に一度の大きな事業です。
だからこそ、業者任せにするのではなく、発注者として正しい知識を持ちながら進めていくことが重要ではないでしょうか。
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