【14時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンションの大規模修繕工事の費用はいくら?相場と内訳をわかりやすく解説

マンションに住んでいると、いずれ必ず訪れるのが「大規模修繕工事」です。
しかし、いざ検討が始まると多くの方がこう感じます。

・費用っていくらかかるの?
・修繕積立金で足りるの?
・なぜそんなに高いの?
・相場感がわからない!

この記事では、マンション管理の実務経験をもとに、初心者の方でもわかるように「大規模修繕工事の費用」についてやさしく解説します。


大規模修繕工事の費用相場

まずは結論からお伝えします。

大規模修繕工事の費用は、
1戸あたり約100万円〜150万円程度がひとつの目安です。

これは、国土交通省が公表している「令和3年度マンション総合調査」においても、同程度の水準が確認されています。

ただし、上記総合調査は令和3年度公表されたものであるため、コロナショック・ウクライナ戦争以前の調査結果のため、現在の相場観とは2〜3割ほど乖離がありますのでご注意ください。

規模別のイメージ

・30戸のマンション:約3,000万〜4,500万円
・50戸のマンション:約5,000万〜7,500万円
・100戸のマンション:約1億〜1億5,000万円

※あくまで目安であり、建物の状態や仕様によって大きく変動します。


なぜこんなに高いのか?

「思ったより高い」と感じた方も多いと思います。
その理由は、大規模修繕が“建物全体をまとめて直す工事”だからです。

具体的には、

・外壁の補修や塗装
・屋上やバルコニーの防水
・鉄部の塗装
・足場の設置

など、多くの工事が一度に行われます。

特に大きな割合を占めるのが「足場工事」です。
全体費用の約2〜3割を占めることもあり、費用を高く感じる大きな要因です。

適正価格の見積もりを見たとしても「なんか高い」と感じる方も多いのではないでしょうか。
大規模修繕工事は「予防保全」「新築時同等の水準まで直す」ことを基本としており、
建物は綺麗になりますが、工事をしたから”何かが大きく変わった”ということが少ないのが、
実情です。
マンションにとって非常に重要な工事であることは理解しているが、費用対効果がわかりづらいのが原因かな、とも思います。

また、全体費用の2〜3割を占める仮設工事(共通仮設工事・足場工事)は工事が終わったら撤去されてしまいますし、屋上防水は普段ほとんど目にすることのない場所の工事のため、
上記理由も、費用対効果がわかりづらい一因ではないでしょうか。


費用の内訳をわかりやすく解説

大規模修繕工事の費用は、主に以下のような項目で構成されています。

仮説工事

仮設工事には「共通仮設工事」「直接仮設工事」があります。

共通仮設工事は、工事現場全体で使う仮設設備のことです。たとえば仮囲い・現場事務所・仮設トイレ・電気や水道など、工事を安全かつ円滑に進めるための共通の準備です。

ここで、費用を抑えるためのワンポイントは、現場事務所や職人さんが使う仮設トイレをマンションの設備で補うことです。集会所の貸し出しや、共用トイレの貸し出しです。

直接仮設工事は、建物の周囲に足場を設置するための費用です。
安全に作業するために必須であり、最も高額になりやすい項目です。

防水工事

建物に雨水が侵入するのを防ぐための重要な工事です。
主に屋上やバルコニー、外廊下などに防水層を施工し、
コンクリート内部への水の浸入を防ぎます。
防水性能が低下すると雨漏りや鉄筋の腐食につながるため、
10〜15年を目安に定期的な改修が必要です。
建物の寿命を延ばすうえで欠かせない工事のひとつです。

ここで、費用を抑えるためのワンポイントは、バルコニーや外廊下、外階段の床にシートが貼られている場合、劣化の状況をみて先延ばしにすることです。特に外廊下、外階段に床シートの張り替えは、足場がなくてもできる工事のため、優先度が低く工事を先延ばしにすることがよくあります。


外壁補修工事

コンクリート部分のひび割れ(クラック)や浮き、欠損、爆裂の補修を行います。
タイル張りのマンションであれば、ひび割れたタイルなどは張り替えを行います。
タイルが浮いている場合は浮きの状況により、補修方法が変わってきます。
この項目は建物の劣化状況によって費用が大きく変わります。

実は工事着手後、工事金額が最も変動するのがこの項目です。
詳しい解説については別の記事で解説したいと思います!


塗装工事

建物の外壁や鉄部に塗料を塗り、見た目をきれいにするだけでなく
雨や紫外線から建物を守るための工事です。
塗膜が劣化すると防水性や耐久性が低下し、ひび割れやサビの原因になります。
一般的に10〜15年周期で塗り替えが行われ、
建物の寿命を延ばす重要な役割を担います。

また、バルコニーにある隔板(避難する際はここを破って隣戸へ避難してください)や
雨樋なども塗装して長持ちさせていきます。

この工事が一番、”工事やった感”が出ます。
過去には、外壁の色を全面刷新したこともあります!

なお、塗装工事に関しては、下塗り材+仕上げ材の組合わせによって
費用と性能に大きく差が出ます。
また、悪質な工事会社はここで手抜き工事をします。
発注者(管理組合)として、手抜き工事されないために注意すべきポイントは
別の記事で解説したいと思います!


その他の工事

そのほか、大規模修繕工事をやるために、”道連れ”になる工事がいくつかあります。

  • エアコン室外機の移動、脱着
  • 面格子の脱着
  • バリコニーに置いてあるものの移動
  • クリーニング

費用が変わる3つのポイント

同じ規模のマンションでも、費用には差が出ます。
主な要因は以下の3つです。

① 築年数・劣化状況

年数が進むほど、ひび割れや防水の劣化、鉄部のサビなど補修が必要な箇所が増えるため、
工事範囲と作業量が大きくなり費用が上がります。
また、劣化が進行すると下地補修や部材交換など追加工事が必要になり、
当初想定よりコストが膨らむこともあります。
早めに適切な修繕を行うほど、結果的に費用を抑えやすくなります。

※関連記事:【12時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンションの建物劣化診断とは?調査内容とチェックポイントを初心者向けに解説


② マンションの規模

戸数が多いほど1戸あたりの費用は安くなる傾向があります。
(スケールメリット)

ただし建物形状が複雑な場合はスケールメリットが出にくい場合があります。


③ 発注方式の違い

「設計監理方式」と「責任施工方式」で費用や透明性が変わります。

※関連記事:【13時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンション大規模修繕工事の進め方|設計監理方式と責任施工方式の違いをわかりやすく解説


修繕積立金で足りるのか?

多くの方が最も気になるポイントです。

結論としては、
積立が適切であれば基本的には賄える設計になっています。

しかし実際には、

・積立金が不足している
・計画が甘い
・想定以上に劣化している

といった理由で、

修繕積立金では足りないケースも少なくありません。

そのため、日頃から長期修繕計画を見直すことが重要です。

修繕積立金が不足したらどうする

修繕積立金が不足する場合には、一時金の徴収(各区分所有者から、持分割合に応じてお金を徴収する方法)や金融機関からの借入を行います。

実際には、設計段階で資金計画の検討を行うので工事実施前に修繕積立金の過不足は判明します。
大規模修繕工事以外にも長期修繕計画に記載されている計画修繕が発生しそうな場合は、
手もと資金を残すために借りれを申請し、
工事完了時に借入が不要な結果となった場合は借入を行わないことも考えられます。

費用を適正にするためのポイント

大規模修繕工事は高額だからこそ、「適正な価格」で行うことが重要です。

ポイントは次の3つです。

相見積もりを取る

複数の業者から見積を取り、比較することで適正価格が見えてきます。 (設計監理方式)


専門家を活用する

設計事務所など第三者の専門家を入れることで、透明性が高まります。(設計監理方式)

また、各自治体ではマンション管理の無料相談窓口が設置されていることが多いです。
マンション管理士や、建築士などの専門家に相談することが可能です。
※詳細は各自治体のホームページを参照してください。
「〇〇市(区)マンション管理 支援」と検索すれば出てきます。


管理会社、設計事務所、工事会社任せにしない

すべてを任せきりにすると、ブラックボックス化するリスクがあります。
重要なことなので何度も言いますが、
全てにおいて管理組合として主体的に関わることが大切です。

昨今話題となっている、マンション改修専門業者による談合疑惑や、悪徳コンサル、なりすまし事件など、大きな金額が動く工事ですので、専門知識を持たない管理組合を狙ってくる輩も多く存在するが実情です。

「忙しいから…」「専門的なことはわからないから…」と言わずに、
まずは基本的な知識を身につけた上で、自分の資産は自分で守っていきましょう。

まとめ

大規模修繕工事の費用は、
1戸あたり100万円〜150万円程度が目安です。

ただし、実際の費用は

・建物の劣化状況
・規模
・発注方式
・管理組合の考え方

によって大きく変わります。

重要なのは、「高いか安いか」ではなく
適正な内容・適正な価格で工事を行うことです。

そのためにも、正しい知識を持ち、管理組合として主体的に判断していきましょう。

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