「うちのマンションそろそろ築10年を迎える頃だけど、
大規模修繕工事っていつ行うのだろうか?」
「何から始めたら良いのだろうか?」
なんてことを疑問に思うことはありませんか?
マンションの大規模修繕工事の検討始める際、
いきなり見積もりを取ったり、工事を始めるわけではありません。
まず最初に行われるのが「建物劣化診断」です。
建物劣化診断とは、マンションの外壁や屋上、バルコニーなどの状態を調査し、
どの部分にどの程度の劣化が発生しているかを確認する調査のことです。
人間に例えると「健康診断」のようなもので、
建物の状態を正しく把握することで、
必要な修繕工事の内容や範囲を決めることができます。
この記事では、初めて大規模修繕工事に係る理事会役員など
初心者の方に向けて、建物劣化診断の概要や調査内容、
理事としてチェックすべきポイントについてわかりやすく解説します。
建物劣化診断とは
建物劣化診断とは、
マンションの建物の状態を調査し、
劣化の状況を確認するための調査です。
マンションは屋外にさらされているため、
雨や紫外線、気温変化などの影響を受け、年月とともに少しずつ劣化していきます。
外壁のひび割れや塗装の劣化、防水層の傷みなどは、時間の経過とともに発生する代表的な劣化です。
こうした劣化を放置すると、住まいとしての快適性が失われていくだけでなく、
雨漏りやコンクリートの劣化など建物の寿命に影響する可能性があります。
そのため、大規模修繕工事を計画する際には、まず今の建物がどういう状態にあるかを調査し、
どの部分をどのように修繕する必要があるのかを確認する必要があります。
この調査結果をもとに、修繕計画や工事内容が決められていきます。
なぜ建物劣化診断が必要なのか
大規模修繕工事の前に建物劣化診断を行う理由は主に3つあります。
修繕が必要な場所を正確に把握するため
マンションの外観だけでは、どの部分がどの程度劣化しているかを正確に判断することは難しい場合があります。専門的な調査を行うことで、劣化の状況を客観的に把握することができます。
修繕工事の範囲を決めるため
建物全体を修繕するのではなく、劣化の状況に応じて必要な部分を修繕することで、適切な工事計画を立てることができます。
適正な工事実施時期を決定するため
劣化診断を行うことで、現在の建物の劣化状況がわかります。
その結果を受けて、
大規模修繕工事をすぐ実施した方が良いのか
数年後まで実施を先延ばしできるのかを判断し、
適切な工事時期を見極めます。
この「適切な時期に工事を行う」というのは非常に重要で、
工事の実施時期が早すぎると将来的に修繕積立金が不足する恐れがあります。
逆に、工事を先延ばしにすればするほど修繕積立金のキャッシュフローはよくなりますが、
不具合が発生したり、美観の低下などにより住まいとしての快適性が失われます。
また、一度劣化すると完全に元の状態に戻すことは困難で、結果的に1回あたりの工事の金額が高くなる恐れもあります。
劣化診断で調査する主な部分
建物劣化診断では、主に共用部(バルコニー含む)を調査します。
主な調査箇所は以下のとおりです。
外壁
外壁では、ひび割れや塗装の劣化、コンクリートの傷みなどを確認します。外壁の劣化は雨水の浸入につながることがあるため、重要なチェックポイントです。
一般的には、足場を組んだりブランコ等(ビルの窓清掃に近いイメージです)は使用せず手の届く範囲で実施します。
タイル
近年は多くのマンションがタイル張りとなっております。
タイル張りのマンションでは、タイルの浮きや剥がれ、ひび割れがないかを確認します。
タイルが浮いている場合、落下事故につながる可能性があるため注意が必要です。
屋上防水
屋上には防水層が施工されていますが、年数が経過すると防水性能が低下します。
漏水の危険性がある防水層のひび割れや膨れなどがないかを調査します。
シーリング
外壁の目地やサッシ周りにはシーリング材と呼ばれるゴム状の弾力のある材料が使用されています。
「シールする=蓋をする、雨水の侵入を防ぐ意味があります」
シーリングは紫外線などの影響や経年により硬化やひび割れ、剥離が発生するため、
劣化状況を確認します。
共用廊下・階段・バルコニー
共用廊下や階段の床防水、床シート、手すり、塗装(メーターボックスなどの鉄部や雨樋(塩化ビニル製)などの非鉄部)なども劣化診断の対象となります。
日常的に使用される部分のため、安全性の確認も重要です。
また、専用使用部分であるバルコニー(天井・壁・床)も調査の対象となる場合があります。
劣化診断の主な調査方法
建物劣化診断では、いくつかの方法を組み合わせて調査を行います。
目視、触診調査
調査員が建物の状態を直接確認する方法です。ひび割れや塗装の劣化など、外観から確認できる劣化を調査します。触診検査は主に外壁や鉄部などの塗装面に直接手で触れて塗膜の劣化状況を確認します。
打診調査
タイルやモルタル仕上げの外壁では、専用の工具(打診棒)で軽く叩いたり、壁面をコロコロ転がしながら調査を行います。音の違いによってタイルの浮きなどを確認することができます。
機器を使った調査(物理試験)
物理試験は機械を使って採取したり、分析機関に持ち込んだりして調査します。
主な物理試験は以下の3つです。
- 塗膜付着力試験
⇨塗膜がコンクリートにきちんと付着しているかどうかを測定します。 - コンクリートの中性化深度試験
⇨コンクリートの表面からどれくらい中性化(アルカリ性から酸性へ移行していくこと)が
進行しているかどうかを測定します。 - シーリングのダンベル試験
⇨シーリングが適度な弾力を保持しているかどうか測定します。(固くても柔らかくてもダメ)
アンケート調査
建物劣化診断を行う際には、居住者へのアンケートを実施することがあります。雨漏りやひび割れ、設備の不具合など、日常生活の中で気付いた不具合のみならず、過去の不具合についても把握することで、調査箇所の参考資料として活用されます。
劣化診断の費用はいくら?
建物劣化診断の費用は、マンションの規模や調査内容によって異なりますが、一般的には数十万円から100万円程度になることが多いとされています。
例えば、戸数が多いマンションや複数の棟があるマンション(団地型)など外壁タイルの調査範囲が広い場合は、調査費用が高くなる傾向があります。
建物劣化診断は、大規模修繕工事の内容や費用を検討するための重要な調査です。適切な修繕計画を立てるためにも、事前にしっかりとした診断を行うことが大切です。
劣化診断は誰に依頼する?
建物劣化診断は、一般的に次のような専門家や会社に依頼します。
- 管理会社
- 設計事務所
- 建築コンサルタント
- 建物調査会社
多くの場合、大規模修繕工事を進める際には、設計事務所やコンサルタントが劣化診断を実施し、その結果をもとに修繕設計を行います。
また、管理会社が調査を手配するケースもありますが、マンションの規模や方針によって進め方は異なります。
理事会としては、複数の専門家の意見を聞きながら、信頼できる専門家に依頼することが重要です。
まとめ
建物劣化診断は、マンションの大規模修繕工事を進めるうえで最初に行われる重要な調査です。
建物の状態を正しく把握することで、必要な修繕工事の内容や範囲を決めることができます。また、適正な工事費用を算出するためにも、劣化診断は欠かせない工程です。
マンションの管理組合や理事会が大規模修繕工事を検討する際には、まず建物劣化診断を行い、建物の現状を把握することが重要です。

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