【11限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンション大規模修繕工事とは?流れ・費用・工事中の生活までわかりやすく解説

マンションに住んでいると、掲示板や総会資料で「大規模修繕工事」という言葉を目にすることがあります。
しかし、実際にどのような工事なのか、どのような流れで進むのかを詳しく理解している人は多くありません。

また、

「大規模修繕工事の時期に理事役員になった!何から始めればいいのだろう?」

「大規模修繕工事って普段の生活への影響や、工事中の制約はあるのだろうか?」

といった不安もあるのではないでしょうか。

マンションの大規模修繕工事とは、建物の劣化を補修し、安全性や資産価値を維持・向上させるために行う大規模な改修工事のことです。適切なタイミングで修繕を行うことで、建物を長く安心して使い続けることができます。

※建築基準法で定められている「大規模な修繕」「大規模な模様替」とは異なります。
こここで取り扱う大規模修繕工事とは、
工事範囲が建物全体(共用部)に及び、工事金額が高額、工事期間が長期にわたる工事のことで、
主に建物全体に足場を架設し、屋上防水・外壁補修・各種塗装を行う工事を指します。
配管の更新など設備改修工事は一旦対象外としていますのでご注意ください。

この記事では、マンションの大規模修繕工事について
「なぜ必要なのか」「どのような流れで進むのか」「費用の考え方」「工事中の生活への影響」まで、初めての方にもわかりやすく解説します。


マンション大規模修繕工事とは?なぜ必要なのか

マンションはコンクリートや鉄でできているため丈夫に見えますが、時間の経過とともに少しずつ劣化していきます。
外壁や屋上(防水層)、共用廊下などは、雨風や紫外線の影響を受け続けるため、定期的な修繕が必要になります。

例えば、時間の経過とともに次のような劣化が起こります。

  • 外壁のひび割れ
  • タイルの浮きや剥がれ
  • 屋上防水の劣化
  • 共用廊下やバルコニーの防水劣化

これらを放置すると、雨水が建物内部に入り込み、建物の寿命を縮めてしまう可能性があります。

そのため、大規模修繕工事の基本的な考え方は「予防保全」になります。
※予防保全とは事故や故障が起こる前に補修・修理する考え方です。

ちなみに上記のような予防保全に対し、事故や故障が起きてから補修・修理を行うのは
「事後保全」となります。日常の修繕はこちらに該当するものが多いのではないでしょうか。

多くのマンションでは12〜15年程度の周期で大規模修繕工事を行うことが一般的です。

大規模修繕は、見た目をきれいにするためだけでなく、建物の安全性と資産価値を維持するための重要な工事といえます。


マンション大規模修繕工事の全体の流れ(設計監理方式)

大規模修繕工事は、いきなり工事が始まるわけではありません。
一般的には次のような流れで進められます。

ここでは、最も一般的な「設計・監理方式」にて全体の流れを説明します。
設計監理方式の詳しい説明、そのほかの方式の説明と
メリットデメリットについては
【13時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンション大規模修繕工事の進め方|設計監理方式と責任施工方式の違いをわかりやすく解説

全ての作業には専門知識が不可欠なため、
設計事務所や管理会社の技術部門(以下、設計事務所等)が
実務を担当していきます。

ここでポイントなのは、設計事務所等は管理組合に代わって作業を行いますが、「意思決定」するのは管理組合です。

① 建物劣化診断

まず現在の建物の状態を調査します。

新築であれば、築10年を迎えるあたり、
経年マンションであれば、前回の大規模修繕工事から10年を経過したあたりで
建物劣化診断を実施します。
※いずれも、漏水に対する保証が切れる10年目頃に行うのが一般的です。

専門業者が外壁や防水などの状態を確認し、
どれくらい建物が劣化していて、
どこを修繕する必要があるかを調査・診断します。

この調査結果をもとに、大規模修繕工事の実施時期を検討したり、
修繕の内容を検討していきます。

建物劣化診断についてはこちらの記事で解説しています!
【12時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンションの建物劣化診断とは?調査内容とチェックポイントを初心者向けに解説

② 改修設計

調査結果をもとに、どの部分をどのように修繕するかを決めます。
修繕内容や工事範囲、使用する材料などを検討し、工事の設計を行います。

ここでポイントとなるのが、
費用や緊急度に応じて工事内容を取捨選択していくことです。
設計事務所等の言いなりにならずに、
「本当にこの工事は必要なのか」
「工事を見送った場合のリスク」を
天秤にかけながら工事内容を決めていきましょう。

また、経年マンションでは資産価値を向上するような
「バリューアップ工事」も計画していきましょう。

③ 工事会社の選定

設計内容をもとに、工事を担当する施工会社を選びます。
必ず複数の会社から見積もりを取り、
価格だけでなく実績や提案内容などを比較して決定します。

ここでポイントとなるのが、業者選定の公平性・透明性を確保することです。

※2025年3月に首都圏におけるマンション改修業者に談合の疑いがあるとして
公正取引委員会が立入り調査をしたという報道がありました。
それだけでなく、ある業者がマンションの住民になりすまし、
特定の業者が受注するよう働きかける事件も発生しました。

工事会社の選定については、非常に重要なポイントのため、
別途記事を作成してご紹介したいと考えています。

④ 大規模修繕工事の実施

施工会社が決定すると、いよいよ工事が始まります。
外壁補修や塗装、防水工事などが順番に進められていきます。

⑤ 工事完了とアフターメンテナンス

工事が完了した後は、仕上がりを確認する検査が行われます。
その後も一定期間は不具合がないか確認し、必要に応じて補修対応を行います。


大規模修繕工事の費用と修繕積立金の仕組み

大規模修繕工事は、マンションの規模によって数千万円から数億円になることもあります。
この費用は、区分所有者が毎月支払っている修繕積立金から支払われるのが一般的です。

修繕積立金は、将来の修繕工事に備えて計画的に積み立てているお金です。
多くのマンションでは、長期修繕計画という計画をもとに必要な費用を想定しています。

ただし、築年数の経過や工事費の上昇などにより、積立金だけでは不足する場合もあります。
その場合には次のような対応が検討されます。

  • 修繕積立金の値上げ
  • 一時金の徴収
  • 金融機関からの借入

そのため、マンションの長期修繕計画や修繕積立金の状況を確認しておくことは、住民にとっても重要なポイントです。


大規模修繕工事中の生活への影響

大規模修繕工事が始まると、住民の生活にも一定の影響があります。

特に多いのが次のような点です。

騒音や振動

外壁補修や高圧洗浄などの作業では、一定の騒音や振動が発生します。
工事期間中は日中に音が出る作業が行われることがあります。

特に足場工事については、マンションの規模にもよりますが50戸程度の規模であれば、
足場の設置と解体にそれぞれおおよそ1ヶ月づつかかります。

足場工事や外壁の補修工事は、
金属がぶつかる音やコンクリートの打撃音が断続的に発生します。
コンクリートは音を伝えやすいため、
遠くで工事していてもすぐ近くで工事しているように聞こえることがあります。

最近では在宅勤務をしている人も多いため、工事音が気になるケースもあります。
工事スケジュールを確認しながら対応することが大切です。

工事中は多少の不便がありますが、建物を長く維持するために必要な期間といえるでしょう。

洗濯物やバルコニーの使用制限

大規模修繕工事では、共用部であるバルコニーも工事対象となるため
洗濯物を外に干せない期間が発生します。
また、バルコニーの荷物を一時的に片付ける必要があることもあります。

塗料や防水材の臭い

外壁塗装や防水工事では、
塗料や防水材を使用するため、
作業中に独特の臭いが発生することがあります。
多くの場合は時間とともに軽減しますが、
臭いが気になる場合は窓を閉める、
換気の時間を調整するなどの対応が必要になることもあります。

稀に、過去に化学物質でアレルギー反応が出たことがある場合、
どのように対処すれば良いかという相談を受けることがあります。

工事現場には使用する材料の成分表
(SDS安全データシート:化学物質やそれを含む製品の危険・有害性、取扱い、保管、廃棄方法などを記載した情報提供シート)
が備え付けられています。
ご不安な場合、万が一症状が出た場合はこちらを持って医療機関を受診するようにしましょう。


理事会は大規模修繕工事で何をしているのか

大規模修繕工事は、管理会社や設計事務所だけで進めるものではありません。
マンションの管理組合と理事会が中心となって検討を進めていきます。

理事会では主に次のようなことを決定します。

  • 修繕の時期
  • 修繕の方針
  • 設計内容の確認
  • 工事会社の選定
  • 総会での承認
  • 工事の進捗確認
  • アフターメンテナンスの確認

最終的な重要事項は総会で決議され、区分所有者の合意のもとで工事が実施されます。

理事会の開催頻度や工事内容によりますが、
50戸程度のマンションであれば、工事期間を5ヶ月とし
理事会毎月開催であれば、建物劣化診断から工事完了まで最短で2年程度、
隔月開催であれば3年かかる場合もあります。


大規模修繕工事で失敗しないためのポイント

大規模修繕工事を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。

  • 修繕内容を十分に検討する(過剰な仕様、不要な工事範囲は実施しない)
  • 複数の会社を比較する(工事会社選定における不正を防ぐ)
  • 住民への情報共有を行う(設計説明会の開催など、合意形成を行う)
  • 専門委員会を発足させる(意欲的な住民を巻き込む)

特に住民への情報共有が不足すると、不安やトラブルの原因になることがあります。
アンケートや説明会などを通じて、住民の意見を吸い上げたり、
工事内容やスケジュールを共有することが重要です。


まとめ

マンションの大規模修繕工事は、建物の劣化を補修し、安全性と資産価値を維持するために行う重要な工事です。

一般的には次のような流れで進められます。

  • 建物劣化診断
  • 改修設計
  • 工事会社の選定
  • 大規模修繕工事の実施
  • 工事後の確認

工事期間中は生活に一定の影響がありますが、マンションを長く安心して維持するためには欠かせない取り組みといえるでしょう。

今後マンションで大規模修繕工事が予定されている場合は、工事の流れや費用の仕組みを理解しておくことで、より安心して工事期間を過ごすことができます。

本記事では、大規模修繕工事に係る基礎をお話ししました。
本テーマは10数年に一度しか発生しないイベントですが、
マンション生活をより良くしていくために非常に重要なテーマとなりますので、
各セクションを詳細に説明する記事を随時作成していきたいと思います!

コメント