マンションの長期修繕計画とは?見方・注意点・修繕積立金との関係をわかりやすく解説|22時限目

マンション大規模修繕工事の基礎

マンションを購入すると、
毎月「修繕積立金」を支払うことになります。

しかし、

「何のために積み立てているの?」
「将来、本当に足りるの?」
「長期修繕計画って何?」

と感じたことはないでしょうか。

実は、
マンション管理において非常に重要なのが
「長期修繕計画」です。

長期修繕計画は、
簡単に言えば、

「このマンションを将来どう維持していくか」
をまとめた“建物の未来設計図”のようなものです。

この計画が適切でないと、

  • 修繕積立金不足
  • 一時金徴収
  • 大規模修繕工事の混乱

など、
将来的な大きな問題に繋がることもあります。

この記事では、

  • 長期修繕計画とは何か
  • 何が書かれているのか
  • どこを見ればよいのか
  • 修繕積立金との関係

について、
マンション管理初心者にもわかりやすく解説します。

また、これからマンションを購入する人にとっても、非常に重要なチェックポイントになります。


■長期修繕計画とは?

長期修繕計画とは、

「将来行う修繕工事の予定と費用をまとめた計画書」
です。(共用部に限ります。共用部と専有部の違いについてはこちら

多くのマンションでは、
おおよそ30年程度を見据えて作成されています。

マンションは、
購入した時がゴールではありませんむしろスタートなのです。

みなさんは、仮にマンションを30年維持していくためにいくら必要かご存知でしょうか?

建物は年月とともに、

  • 外壁
  • 防水
  • 給排水設備
  • エレベーター
  • 鉄部塗装

など、
さまざまな部分が劣化していきます。

そのため、

「何年後に、どの工事を、どれくらいの費用で行うか」

を事前に予測し、
計画的に修繕積立金を積み立てていくためのものです。

つまり長期修繕計画は、
マンションを長く安全に維持していくための
“ロードマップ”
とも言える存在です。


■長期修繕計画はなぜ重要なの?

長期修繕計画が重要な理由は、
マンションの修繕には非常に大きなお金がかかるためです。

例えば、
大規模修繕工事では、

  • 数千万円
  • 大規模マンションでは数億円

規模になることも珍しくありません。

築年数や、建物の形状、工事の計画内容により様々ですが、
現場の感覚だと、140万円/戸〜180万円/戸ほどかかってきます。

もし事前の計画がなければ、

「修繕時にお金が足りない」

という事態になってしまいます。

すると、

  • 修繕積立金値上げ
  • 一時金徴収
  • 金融機関からの借入

などが必要になる場合があります。

また、
長期修繕計画は、
マンションの資産価値にも大きく関係します。

適切に管理されているマンションは、
中古市場でも評価されやすくなります。

逆に、

  • 計画が古い
  • 積立不足
  • 修繕が先送り

となると、
将来的な不安要素として見られることもあります。

マンション購入時にも、
長期修繕計画を確認することは非常に重要です。

マンション購入前に必ず確認したい「管理と修繕」のチェックポイント5選|失敗しない見極め方を解説


■長期修繕計画には何が書かれている?

長期修繕計画には、
主に次のような内容が記載されています。


■修繕予定時期

例えば、

  • 外壁修繕:12〜15年周期
  • 屋上防水:12〜15年周期
  • 鉄部塗装:5〜7年周期

など、
各工事のおおよその実施時期が記載されています。

ただし、
これはあくまで目安です。

実際には、
建物の劣化状況によって前後しますので、
長期修繕計画上の工事時期が近づいてきたら、
適宜、調査を実施することをお勧めします。


■予定工事項目

工事項目も細かく記載されています。

例えば、

  • 外壁補修
  • シーリング
  • 防水工事
  • 給水設備更新
  • 照明更新

などです。

実は長期修繕計画上には「大規模修繕工事」と言う名称の工事は存在しません。

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、
「建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事(全面的な外壁塗装等を伴う工事)」
と定義されており、長期修繕計画上は
「仮設工事」「屋上」「屋根防水」「床防水」「外壁塗装等」「鉄部塗装」「建具・金物」「共用内部」
あたりの工事をまとめて行う工事と考えてください。

また、ここで出てきた「計画修繕工事」は
長期修繕計画上に記載されている工事という考え方でOKです。

私が現場でよくお話しするのは、
「長期修繕計画上に記載されている工事で、
建物全面に足場をかけ、屋上防水や床防水、タイルの補修や外壁の塗装、鉄部塗装等を行う工事です」とお伝えしています。

大規模修繕工事というと
「外壁塗装だけ」
と思われがちですが、
実際にはさまざまな工事が含まれます。

マンション大規模修繕工事の流れとは?準備から完了までを時系列でわかりやすく解説


■概算費用

各工事ごとに、
概算費用も記載されています。

ただしここで注意したいのは、
長期修繕計画の金額は
“確定金額ではない”
ということです。

近年は、

  • 人件費上昇
  • 資材価格高騰
  • 建設業界の人手不足

などにより、
工事費が上昇傾向にあります。

数年前の計画金額では、
実際の工事費に足りないケースも少なくありません。

大規模修繕を計画する際は、(1>2>3となることが望ましい)
1.長期修繕計画上の金額を大枠の予算とする
2.設計後に算出された設計概算金額
3.施工会社各社が提出してきた見積もり
この順番で工事計画と同時並行で資金計画を立てていくことが重要です。


■修繕積立金残高予測

長期修繕計画では、
将来的な修繕積立金残高の推移も予測されています。

ここは非常に重要なポイントです。

例えば、

「15年後に積立金不足になる」

ことが予測されている場合もあります。

しかし、
修繕積立金の値上げに関する議論を先送りにした結果、後々問題になるケースが増えてきています。


■よくある誤解|長期修繕計画は“絶対”ではない

ここは非常に重要です。

長期修繕計画は、
将来を予測した計画書であり、
絶対にその通りになるわけではありません。

例えば、

  • 想定より劣化が早い
  • 工事範囲が増える
  • 資材価格が高騰する
  • 災害で修繕が必要になる

など、
さまざまな要因で計画は変わります。

そのため、
長期修繕計画は
「一度作って終わり」
ではなく、

定期的な見直し

が非常に重要になります。

国土交通省では、5年ごとの見直しを推奨しておりますが
大規模修繕工事(14年ごとと仮定)を目安に7年ごとや、
大規模修繕工事の実施後などに、
計画を見直すケースが多いです。


■なぜ修繕積立金不足が起きるの?

最近、
全国的に問題となっているのが
「修繕積立金不足」です。

その原因として多いのが、

  • 当初設定額が安い
  • 計画見直し不足
  • 工事費高騰
  • 段階増額積立方式

などです。

特に新築時は、
販売しやすくするために
修繕積立金を低く設定しているケースもあります。

しかし、
実際には将来的に大きな修繕費用が必要になります。

そこで国土交通省では
「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を策定し、
国土交通省は、将来の資金不足を防ぐため、
修繕積立金は毎月同額を積み立てる「均等積立方式」が望ましいとしています。
段階増額方式を採用する場合も、早期に値上げを完了し、
均等積立方式へ近づけることを推奨しています。

修繕積立金が足りないと言われたら?マンション管理組合が取るべき対処法をわかりやすく解説


■理事会・管理組合が確認したいポイント

理事会や管理組合としては、
長期修繕計画について
次の点を確認したいところです。


■計画は更新されているか?

10年以上前の計画が、
そのまま使われているケースもあります。

工事費や社会状況は大きく変わるため、
定期的な見直しが重要です。


■積立不足予測はないか?

将来的に資金不足が予測されていないか、
確認が必要です。

問題を先送りにすると、
後の理事会や住民が苦労することになります。


■工事項目は現実的か?

必要な工事が抜けていないか、
逆に過剰になっていないかも重要です。

特に設備更新系は、
近年費用が大きく上がっている傾向があります。


■管理会社任せになっていないか?

長期修繕計画は専門的な内容も多いため、
管理会社任せになりがちです。

しかし、
最終的に責任を持つのは管理組合です。

内容を理解し、
必要に応じて専門家の意見を聞くことも重要です。

毎年理事役員が変わる組合だと、長期修繕計画書が渡されて終わり、
見直しを無償で行う管理会社も多く、長期修繕計画の中身まで深く議論することが少ないのではと感じています。

長期修繕計画を議論するということは、マンションの将来について話し合うことであり、非常に重要な場面です。管理会社や人任せにするのではなく、ぜひ積極的に参加していただきたいと思います。


■国土交通省ガイドラインとの関係

長期修繕計画については、たびたび引用してきましたが、
国土交通省もガイドラインを公表しています。(長期修繕計画、修繕積立

近年は、

  • 管理計画認定制度
  • マンション管理適正化

なども進められており、
長期修繕計画の重要性はさらに高まっています。

特に、

  • 修繕周期
  • 積立方式
  • 計画期間

などは、
国交省ガイドラインが参考にされることも多いです。


■まとめ

長期修繕計画は、
マンションの未来を考えるうえで
非常に重要な資料です。

しかし実際には、

「難しそう」
「よく分からない」

という理由で、
詳しく見ていない方も少なくありません。

ですが、

  • 修繕積立金不足
  • 一時金徴収
  • 大規模修繕工事の混乱

などを防ぐためには、
長期修繕計画を理解しておくことが大切です。

特に理事会役員になった場合は、
一度しっかり確認してみることをおすすめします。

マンション管理について体系的に知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

マンション管理の基礎|管理組合・管理会社・大規模修繕をわかりやすく解説

いずれは別の記事で、長期修繕計画書の読み方について解説していきたいと考えています!

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