長期修繕計画と修繕積立金の関係とは?積立金不足が起こる理由をわかりやすく解説|25時限目

長期修繕計画

マンションの理事会に参加していると、

「修繕積立金を値上げしなければならない」

「将来的に積立金が不足する可能性がある」

といった話を耳にすることがあります。

また、

マンション購入を検討している方の中にも、

「修繕積立金は安い方が良いのでは?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし実際には、

修繕積立金が安いことが必ずしも良いとは限りません。

なぜなら、

マンションは建物を維持していくために、

将来発生する修繕工事の費用を計画的に積み立てる必要があるからです。

前回の記事では、

長期修繕計画書の読み方について解説しました。

マンションの長期修繕計画書はここを見る!国土交通省標準様式を使って読み方をわかりやすく解説

今回は、

長期修繕計画と修繕積立金の関係に焦点を当て、

  • なぜ修繕積立金が必要なのか
  • どのように金額が決まるのか
  • なぜ積立金不足が起こるのか
  • 値上げを抑えるためにできること

をわかりやすく解説します。


■結論|修繕積立金は「長期修繕計画を実現するためのお金」

まず結論からお伝えします。

修繕積立金とは、

長期修繕計画を実現するため=建物を計画的に維持していくためのお金です。

長期修繕計画だけ作成しても、

絵に描いた餅となり、工事費用が確保できていなければ工事は実施できません。

逆に、

修繕積立金だけ集めていても、

計画がなければ適切に運用することができません。

つまり、

マンションを適切に維持管理するためには、

両方をセットで考える必要があります。


■そもそも修繕積立金とは?

修繕積立金とは、

将来実施する修繕工事のために、

区分所有者全員で積み立てるお金です。


■管理費との違い

管理費と混同されることがありますが、

役割は異なります。

管理費は、

  • 共用部の電気代
  • 清掃費
  • 管理員の人件費
  • 管理会社への委託費
  • エレベーター保守点検費

など、

日常的な維持管理に使用されます。

一方、

修繕積立金は、

  • 大規模修繕工事
  • 屋上防水更新
  • 給排水設備更新
  • エレベーター更新

など、長期修繕計画に記載されている(計画修繕工事)

将来の比較的大きな修繕工事に使用されます。


■どんな工事に使われるのか

例えば、

築12~15年頃に実施される大規模修繕工事では、

  • 足場工事
  • 外壁補修工事
  • シーリング工事
  • 塗装工事
  • 防水工事

などに多額の費用が必要になります。

さらに築30年を超えると、

給排水設備や機械設備、玄関扉やサッシの更新工事も発生します。

こうした将来の支出に備えるためのお金が、

修繕積立金です。


■長期修繕計画と修繕積立金の関係

長期修繕計画は、

マンションの将来設計図です。

一方、

修繕積立金は、

その計画を実現するための資金です。


■長期修繕計画から必要な積立金を算出する

国土交通省のガイドラインでは、

まず長期修繕計画を作成し、

将来必要となる修繕工事費を算出します。

そのうえで、

必要な資金を逆算して修繕積立金額を設定します。

つまり、

本来は

工事費が先

積立金が後

という考え方です。


■積立金額はどう決まるのか

積立金額は、

  • 建物規模
  • 戸数
  • 修繕工事項目
  • 修繕周期

などによって決まります。

そのため、

同じ築年数でも、

マンションによって必要な積立金額は大きく異なります。


■均等積立方式とは?

修繕積立金の積立方式には、

主に二つの考え方があります。

一つ目が

均等積立方式です。


■均等積立方式の仕組み

均等積立方式とは、国土交通省のガイドラインで推奨されている方式であり、

計画期間全体で必要となる修繕費を見込み、

30年間、毎月ほぼ一定額を積み立てる方法です。

例えば、

30年間で必要な修繕費が3億円であれば、

その費用を長期間にわたり均等に負担していきます。


■均等積立方式のメリット

最大のメリットは、

将来の値上げリスクが小さいことです。

区分所有者は、

将来の負担を予測しやすくなります。

また、

資金不足が発生しにくいため、

安定したマンション運営につながります。


■均等積立方式のデメリット

一方で、

新築時から積立金額が高めに設定される傾向があります。

そのため、

販売時に敬遠されやすいという側面があります。


■国土交通省が推奨する理由

国土交通省のガイドラインでは、

均等積立方式が望ましいとされています。

理由は、

将来世代へ負担を先送りしにくいためです。


■段階増額積立方式とは?

もう一つが、

段階増額積立方式です。

現在のマンションでは、

こちらが採用されているケースが主流かと思います。


■段階増額積立方式の仕組み

段階増額積立方式とは、

新築時は積立金を低く設定し、

(竣工〜10年程度は大きな修繕がほとんど発生しないため必要資金が少なくて済むためです)

数年ごとに値上げしながら必要額を確保していく方式です。

例えば、

新築時は月額8,000円

10年後に12,000円

20年後に20,000円

というように、

段階的に増額していきます。


■段階増額積立方式のメリット

段階増額積立方式のメリットは、

新築購入時の毎月負担を抑えられることです。

特に分譲時には、

管理費と修繕積立金の合計額が購入判断に影響するため、

初期負担を低く見せやすいという特徴があります。

また、

購入直後は大規模修繕工事まで期間があるため、

一定の合理性がある考え方とも言えます。


■段階増額積立方式のデメリット

一方で、

近年問題となっているのが、

計画どおりに値上げが実施できないケースです。

修繕積立金の値上げには、

総会での承認(普通決議)が必要になります。

しかし、実際には種々の理由で

「負担を増やしたくない」

という意見も少なくありません。

その結果、

本来予定していた値上げが見送られ、

将来的な資金不足につながることがあります。


■国土交通省が注意喚起している理由

国土交通省は、

段階増額積立方式そのものを否定しているわけではありません。

しかし、

将来の大幅な値上げを前提とした計画には注意が必要としています。
(国土交通省:マンションの修繕積立金に関するガイドライン

例えば、

30年後に現在の3倍や4倍の積立金を想定している場合、

本当に実現できるのか慎重に検討する必要があります。

理事会としても、

長期修繕計画を確認する際は、

将来の積立金推移を必ず確認したいところです。


■なぜ修繕積立金不足が起こるのか

では、

なぜ修繕積立金不足が起こるのでしょうか。

実は、

原因は一つではありません。


■工事費高騰が反映されていない

近年、

建設業界では工事費が大きく上昇しています。

背景には、

  • 建築資材価格の上昇
  • 人件費の上昇
  • 円安
  • 原油価格変動

などがあります。

数年前に作成した長期修繕計画では、

現在の工事費水準に対応できていない場合があります。

その結果、

想定以上の工事費が必要になり、

積立金不足につながります。

▶ 中東情勢でなぜマンション大規模修繕工事費が上がる?原油・ナフサと建築資材の関係をわかりやすく解説

適切なタイミング(5〜7年程度)で見直しが必要です。

特に、現在の長期修繕計画の作成年月日がコロナ禍以前の場合(だいたい2020年以前)は見直しを行うべきでしょう。


■段階増額積立方式の値上げが実施できない

もっとも多い原因の一つです。

計画では値上げする前提になっていても、

総会で合意形成ができず、

値上げできないケースがあります。

すると、

長期修繕計画の前提が崩れ、

資金不足が発生します。


■長期修繕計画が見直されていない

長期修繕計画は、

一度作ったら終わりではありません。

国土交通省では、

おおむね5年ごとの見直しを推奨しています。

(筆者的には5〜7年が良いと考えています。だいたい、
大規模修繕工事直前もしくは直後に見直しを行い、その中間で行う
→大規模修繕工事の周期を12〜15年と想定し、
長期修繕計画を5〜7年周期で見直しを行うことを推奨しています)

しかし、

長期間見直されていないマンションも存在します。

古い計画のままでは、

現実とのズレが大きくなってしまいます。


■想定外の修繕工事が発生する

マンションは生き物です。

計画どおりに劣化するとは限りません。

例えば、

  • 漏水事故
  • 給排水設備の不具合
  • 外壁の想定外劣化
  • 災害、水害

などが発生することがあります。

その結果、

予定外の支出が発生し、

積立金残高が減少する場合があります。


■新築時の設定金額が低すぎる

近年、

国土交通省も問題視しているのが、

新築時の積立金設定です。

販売しやすくするために、

積立金を低く設定しているケースがあります。

その場合、

将来的に大幅な値上げが必要になる可能性があります。


■修繕積立金の値上げを抑えるために検討したいポイント

理事会としては、

できるだけ急激な値上げは避けたいところです。

そのためには、

早めの対応が重要になります。


■長期修繕計画を定期的に見直す

まず大切なのが、

長期修繕計画の定期見直しです。

資金不足は、

突然発生するものではありません。

多くの場合、

数年前から兆候が現れています。

早めに把握できれば、

緩やかな対応が可能になります。


■工事内容や修繕周期を精査する

長期修繕計画に記載された内容は、

絶対ではありません。

実際の建物状況に応じて、

工事項目や修繕時期を見直せる場合があります。

ただし、

単純な先送りは将来負担を増やす可能性もあるため、

専門家の助言を受けながら判断することが重要です。

マンション所有者にとって一番のリスクは「必要な時に必要な修繕が行えない」≒管理不全となることなので、作成者側からすると、どうしても計画は安全側に考えがちです。

やはり、長期修繕計画も管理会社やコンサルが提出したものを鵜呑みにするのではなく、
金額が大きい項目だけでも、算出根拠(金額や修繕周期)を確認すると良いでしょう。


■適切な施工会社選定を行う

工事費高騰局面では、

施工会社選定も重要になります。

価格だけではなく、

  • 工事項目
  • 数量
  • 工法

なども含めて比較することが大切です。

理事会が知っておくべき見積書の比較ポイントと不正を見抜くコツを解説


■補助金や助成制度を活用する

工事内容によっては、

国や自治体の補助制度が利用できる場合があります。

例えば、

  • 省エネ改修(サッシ、玄関ドア、断熱)
  • バリアフリー改修
  • 防災関連工事

などです。

近年の主流では、サッシや玄関ドア改修工事の補助制度が充実していますので、改修工事を検討する際には利用できる制度がないか、事前に確認しておきましょう。


■早めに住民合意形成を進める

修繕積立金の改定は、

理事会だけでは決められません。

区分所有者の理解が不可欠です。

そのため、

問題が深刻化してから説明するのではなく、

早い段階から情報共有を行うことが重要です。

総会での決議前に「説明会」や「アンケート」を実施すると合意形成がスムーズに進みます。

実際に説明会をやってみると、「値上げの必要性は感じているけど、安いに越したことはない」という意見が多く、どこを落とし所とするか、議論するケースが多いです。


■値上げを先送りするとどうなる?

「値上げはなるべく避けたい」

と考えるのは自然なことです。

しかし、

先送りにはリスクもあります。


■将来の値上げ幅が大きくなる

早めに少しずつ見直せば済んだものが、

後になって大幅な値上げになる場合があります。


■一時金徴収の可能性が高まる

不足額によっては、

一時金徴収が必要になるケースもあります。

区分所有者にとって、

数十万円単位の負担となることもあります。


■借入が必要になる場合がある

金融機関から借入を行い、

工事を実施するケースもあります。

ただし、

借入には返済負担や利息負担が発生します。

近年利上げの影響で、数年前と比べて借入金利が大幅に上がってきています。


■マンション資産価値への影響

必要な修繕が実施できない状態が続くと、(≒管理不全)

建物の劣化が進みます。

結果として、

マンションの資産価値へ大きく影響します。

また、資産価値だけではなく、安心や安全をも脅かす結果となります。


■理事会が確認したいポイント

長期修繕計画を見る際は、

次の項目を確認してみてください。

  • 現在の積立方式は均等積立方式か段階増額方式か
  • 将来の積立金改定計画は現実的か
  • 修繕積立金残高が不足していないか
  • 長期修繕計画は最近見直されているか
  • 工事費上昇が反映されているか

これらを確認するだけでも、

将来のリスクを早期に把握できます。


■まとめ

修繕積立金は、

長期修繕計画を実現するための大切な資金です。

長期修繕計画と修繕積立金は、

切り離して考えることはできません。

また、

積立金不足には必ず理由があります。

  • 工事費高騰
  • 段階増額方式の未実施
  • 長期修繕計画の未見直し
  • 想定外の修繕工事

など、

さまざまな要因が重なって発生します。

大切なのは、

問題が深刻化する前に気付くことです。

理事会役員になった際は、

ぜひ長期修繕計画と修繕積立金をセットで確認してみてください。

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