【9時限目:暮らし・設備の実用知識】マンションで「勝手にやっていい工事・ダメな工事」の境界線

暮らし・設備の実用知識

― 住民トラブルを防ぐために必ず知っておきたい基礎知識 ―


なぜマンションの工事は「自由にできない」と言われるのか

マンションに住んでいると、こんな疑問を持ったことはありませんか?

  • 「自分の部屋なんだから、リフォームは自由でしょ?」
  • 「これくらいの工事、わざわざ聞かなくても大丈夫では?」
  • 「前の住人もやっていたから問題ないはず」

実はこの考え方が、マンションで一番トラブルになりやすいポイントです。

戸建てと違い、マンションは一つの建物をみんなで共有して使っている住まい
そのため、工事には一定のルールがあり、
「やっていい工事」「ダメな工事」「要注意な工事」がはっきり分かれています。

この記事では、
難しい法律や専門用語は使わず
「住民として知っておくべき境界線」をやさしく整理していきます。


まず結論:マンション工事は「場所」と「影響」で決まる

結論からお伝えします。

マンションで工事ができるかどうかは、
次の2つでほぼ決まります。

  1. どこを工事するのか(場所)
  2. 他の住戸や建物全体に影響が出るか

ここで重要になるのが、
**「専有部・共用部・専用使用部分」**という考え方です。

簡単に言うと、

  • 専有部:自分が自由に使える部分
  • 共用部:みんなで使う建物の一部
  • 専用使用部分:特定の人が使っている部分だけど共用部(ここが一番紛らわしい)

「自分の部屋=何でもOK」ではない、
という点がマンション特有の難しさです。

※この区分については
【6時限目:マンション暮らしの基礎】専有部・共用部・専用使用部分の違いをやさしく解説
で解説しています!


基本ルール①:原則OKな工事(専有部内・影響がないもの)

まずは、比較的問題になりにくい工事から見ていきましょう。

多くのマンションでOKになりやすい工事例

以下は、多くのマンションで
事前申請は必要でも、基本的に認められることが多い工事です。

  • 壁紙(クロス)の張り替え
  • キッチン・トイレ・ユニットバスなど設備の交換
  • 建具(室内ドアなど)の交換

これらは専有部の中で完結し、他の住戸に影響しにくいためです。


実は注意が必要な「一見OKそうな工事」

一方で、住民の方がよく勘違いしやすいのがこちらです。

  • フローリングの張り替え
  • 水回りの位置変更
  • 電気容量の変更
  • ガス給湯器の容量変更

たとえばフローリング。
「床を張り替えるだけ」と思われがちですが、

  • 遮音性能(L値など)が規約で決まっている
  • 下の階への音トラブルにつながる

といった理由で、制限が設けられているケースが非常に多いです。

技術的には可能でも、
マンションのルール上はNGということも珍しくありません。

水回りに関しては、マンションの特性上、排水管の関係で制限が必要な場合があります。
古いマンションでは排水管が下の階の天井を通って共用の排水管(竪管)と
接続しているケースがあります。この場合は原則、水回りの位置を変えることができません。
また、自身の階で納まっている場合でも、排水管は管の大きさ・必要な勾配が定められており、
竪管の位置が決まっているため、水回りの位置を大きく変えることは難しいです。

電気やガスについては、マンション全体で容量が決まっているため(共用管や幹線)、
各戸が自由に容量を上げることはできません。
(上限が決まっています。詳しくは管理規約・使用細則、
入居の際に配布された取扱説明書をご参照ください)


基本ルール②:原則NG・要注意な工事(共用部に関わるもの)

次に、特に注意が必要な工事です。

勝手にやるとトラブルになりやすい工事

以下は、住民トラブルに直結しやすい代表例です。

  • 窓・サッシの交換(部屋内に設置する内窓(インナーサッシ)はOK)
  • 玄関ドアの交換(錠と内側の塗装部分はOK)
  • バルコニーの床や手すりの改修(敷物はOK)

これらは見た目は「自分の住戸の一部」に見えますが、
多くのマンションで共用部扱いになっています。

つまり、
個人の判断で工事してはいけない部分です。

※玄関ドアは錠と内側の塗装部分は専有部扱いになっていることが多く、個人の判断で改修することができます。
※微妙なのは網戸です、規約に明記されていないため(サッシの付属物としての扱い)、
個人で修理する場合も多いです。
よくあるのが戸車や網が破れたので理事会へ修繕要望
⇨マンション全体で修理する予定は直近にはないので各自対応という感じではないでしょうか。
※バルコニーの床に敷物をするのはOKであることが多いです。(
置くタイプのウッドデッキやタイル、人工芝など)

「専有部なのにNG」になりやすい理由

「室内なのにダメなの?」と感じる方も多いですが、理由はシンプルです。

  • 建物の性能や安全性に関わる
  • 他の住戸へ影響が出る可能性がある
  • 建物の美観に関わる

マンションは一部分だけ勝手に変えられない構造になっています。


「勝手にやっていい/ダメ」を分ける3つの判断基準

迷ったときは、次の3つを確認してください。

  1. 管理規約・使用細則に書いてあるか
  2. 他の住戸・共用部に影響が出ないか
  3. 将来の大規模修繕に支障が出ないか

特に重要なのが、
👉「管理規約と使用細則」です。管理規約と使用細則については
【7時限目:マンション暮らしの基礎】管理規約と使用細則の違いとは?理事になったら最初に読む理由をやさしく解説

とはいうものの、管理規約や使用細則に全てが書いてあるわけではありません。
読んでもわからない場合は、管理会社へ相談しましょう。


工事前に必ず確認すべきチェックリスト

工事を考えたら、最低限ここは押さえましょう。

最低限これだけは確認しよう

  • 管理規約・使用細則を読む
  • 管理会社へ事前に相談する
  • 理事会や管理組合の承認が必要か確認する

「面倒だな…」と思うかもしれませんが、
事前確認を怠ったことで後悔するケースは本当に多いです。


現場を見てきた立場から伝えたい「よくある失敗例」

実際の現場でよくあるのが、

  • 工事後に「規約違反」と言われてやり直し
  • 業者に任せきりでトラブルになる
  • 「前の住人はやってた」と主張して揉める

どれも、
事前に一言確認していれば防げたケースばかりです。

そして、必ずリフォーム会社にも管理規約の該当箇所は渡しておきましょう。
マンションリフォームの経験が乏しいリフォーム会社だと、
工事中・工事後にトラブルになることがあります。
ひどい場合だと、
無理やり配管を通すために柱や梁に穴を開けてしまう業者もいます。
(このくらいの穴なら大丈夫、鉄筋を切らなければ大丈夫など言ってきます)
工事を発注する施主側も最低限やってはいけない工事について理解しておく必要があります。


実は、リフォーム会社にも勤務していたことがあり、
間取り変更を含むフルリフォームの現場で現場監督をしていて
悩まされたのが、「エアコンの増設」でした。
え?エアコン一台増やすだけなのに何が大変なの?と思われますが、
築30年を超えるマンションだと、
寝室にエアコンが設置できない(エアコンを設置する想定で造られていない)
ケースがあります。
エアコンを設置するためには下記条件を満たす必要があります。

  • 専用電源(6〜8畳程度の広さなら100V)
  • 室外機を置くスペース(バルコニー)※共用廊下NGの場合があります。
  • ドレン水を処理する経路(エアコン室内機で発生する結露水を処理する配管であり、
    外部へ処理するまでに勾配が必要
  • 室外機までの配管経路(スリーブ:コンクリートにあらかじめ空けられた設備配管用の穴)

たかがエアコン設置かと思われますが、意外に制約が多いんです。
※その時はなんとか他の部屋を貫通し、
バルコニー側へ配管経路を確保できたので無事設置することができました。

上記の制約にかかってしまった場合、エアコンが設置できません。
しかし、昨今は猛暑もあり、エアコンがない生活なんて考えられません。
そこで、室外機と室内機が一体となったいわゆる「ウィンドウエアコン」
であれば、設置することが可能です。こちらは、共用部であるサッシに
取り付けるエアコンです。
設置の可否については管理会社や理事会へご確認ください。
※エアコン無し生活が命に関わる時代なので、
NGとなることはないように思いますが…。


トラブルを防ぐためのおすすめ行動

マンション工事で一番大切なのは、

不安なときほど、先に聞くこと

です。

  • 管理会社に早めに相談する
  • 図面や仕様を言葉で確認する
  • 少しでも迷ったら立ち止まる

これだけで、無用なトラブルはほぼ防げます。


まとめ|工事は「知ってから動く」が一番の近道

マンションの工事は、
知ってしまえば必要以上に怖がるものではありません。

ただし、

  • 知らずに進める
  • 自分の判断だけで動く

これが一番危険です。

正しく理解し、正しく手順を踏めば、
リフォームや工事はマンション暮らしをより快適にする手段になります。

このブログでは、
今後も「知らないと損するマンションの基礎」を
住民目線でやさしく解説していきます。
マンション管理に関わる記事を主としていますが、
過去の経験も活かしたリフォームについても、そのうち触れていきたいと考えています。

ぜひ、他の記事もあわせて読んでみてください。

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