マンションの大規模修繕工事は、建物の劣化を補修し、
安全性や資産価値を維持・向上するために行われる重要な工事です。
しかし、いざ大規模修繕工事を検討し始めると、
「どうやって進めればいいの?」
という点で悩む管理組合や理事会も少なくありません。
実は、大規模修繕工事にはいくつかの進め方があり、その代表的なものが
・設計監理方式…設計と施工を別々の会社に発注する方式
・責任施工方式…設計も施工も特定の1社に発注する方式
の2つです。
私は、管理会社に勤務していることから、
設計監理方式も、責任施工(管理会社が工事を行う)の
どちらも実務として行っております。
管理組合の考え方で、向き不向きは分かれるのが実情です。
この記事では、マンションの大規模修繕工事の進め方について、設計監理方式と責任施工方式の違いを初心者にもわかりやすく解説します。
マンション大規模修繕工事の進め方にはいくつかの方式がある
マンションの大規模修繕工事は、どのような体制で工事を進めるかによって、費用や品質、住民の合意形成の進め方などが変わってきます。
大規模修繕工事の進め方は、主に次のような方式に分類されます。
・設計監理方式
・責任施工方式
・CM方式
・ECI方式
この中でも、実際のマンションで多く採用されているのは設計監理方式と責任施工方式です。
国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の発注方式は次のような割合になっています。
・設計監理方式 約80%
・責任施工方式 約12%
このように、多くのマンションでは設計監理方式が採用されていることがわかります。
まずは、それぞれの方式の特徴を見ていきましょう。
設計監理方式とは
設計監理方式とは、設計コンサルタント(設計事務所など)と施工会社を分けて大規模修繕工事を進める方式です。
まず管理組合は、設計事務所などの専門家に依頼し、次のような業務を担当してもらいます。
(細かな業務内容についてはそれぞれ別の記事で解説します!)
・建物劣化診断
・改修設計
・施工会社の選定補助
・工事監理(工事が契約書の通りに施工されているか確認すること)
この方式の大きな特徴は、設計と施工を分離することで第三者のチェックが入ることです。
そのため
・工事内容の透明性を確保しやすい
・複数の施工会社の見積を比較できる
・工事品質のチェックができる
といったメリットがあります。
こうした理由から、多くのマンションで設計監理方式が採用されています。
責任施工方式とは
責任施工方式とは、施工会社が調査・設計・工事までを一括して行う方式です。
(もしくは設計を行わずに、複数の施工業者に見積もりを取得し、1社を選定していくこと)
管理組合は施工会社を1社選定し、その会社が次のような業務を担当します。
・建物調査
・改修計画の作成≒設計
・工事費の見積もり
・大規模修繕工事の実施
設計監理方式と比べると、関係者が少なく、比較的シンプルな体制で工事を進めることができます。
また、設計コンサルタントを別途依頼する必要がないため、コンサルタント費用がかからない場合もあります。
そのため、小規模マンションなどでは責任施工方式が採用されることもあります。
なお、管理会社に調査・設計・工事まで依頼する場合も責任施工方式に含まれます。
設計監理方式のメリットと注意点
設計監理方式の主なメリットは、第三者の専門家が工事内容をチェックできることです。
主なメリット
- 第三者の専門家によるチェックが入る
⇨専門家の目で工事内容を検討することができる - 施工会社選定における自由度が高い
⇨業界新聞などで公募することが一般的です。 - 見積比較が容易
⇨複数の施工会社から同一条件で見積もり取得するため、
工事金額を比較することができます - 工事品質を管理しやすい
⇨管理組合に代わって専門家(第三者)が工事監理を行うため、施工の品質を確保しやすい。
特に戸数の多いマンションや工事内容が複雑な場合には、設計監理方式が向いているといえます。
一方で、注意点もあります。
- 設計コンサルタント費用が発生する
⇨マンションの規模や業務内容にもよりますが、工事費用の5〜10%ほど必要となります。 - 工事までの準備期間が長くなることがある
⇨設計や施工会社選定に短くて1年ほどかかります。 - 管理組合業務の煩雑化
⇨契約先が設計事務所、施工会社と2社になるため、それぞれの業務や工事を監督する必要があります。また工事中や工事後に不具合が発生した際は、施工不良か、設計に起因するものか責任の所在を特定する必要があります。 - 信頼できる設計コンサルタントを選定する必要がある
特に3つ目は非常に重要で、2017年に国土交通省から、
管理組合に対し利益相反行為を行う「不適切コンサル」について
注意喚起や相談窓口が公表されています。
メリットも多く、採用実績が多い方式ですが、
マンションの状況によって、適した方式を検討することが大切です。
責任施工方式のメリットと注意点
責任施工方式の主なメリットは、工事までの手続きが比較的シンプルなことです。
主なメリット
- 関係者が少なく意思決定しやすい
- 責任の所在が明確
- コンサルタント費用が不要となる
主なデメリット(注意点)
- 見積もりの比較が困難
⇨設計前、工事費が算出されていない時点で施工会社を選定するため、提案内容の確認を慎重に行うことが重要になります。 - 管理組合の負担が大きい
⇨全ての作業(工事内容のチェックや、施工会社の選定、工事監理)
を管理組合で行う必要がある)
管理組合はどちらの方式を選ぶべき?
大規模修繕工事の方式は、マンションの規模や管理組合の体制によって適したものが異なります。
とまあ、当たり障りない内容を記載してきましたが、
多くの管理組合を見てきた私が思う
設計監理方式が向いているケースは
- 専門委員会が発足している(修繕委員会など。名称は様々)
- 管理組合運営に関心が高い
大規模修繕工事に限った話ではないですが、
管理組合運営に関心が高いマンションの場合は、
「自分たちでできるところは自分たちでやる」
「他人(管理会社)任せにしない」
傾向が高く、設計監理方式でもスムーズに進められると感じています。
逆に責任施工方式が向いているケースは
※ただしここでいう責任施工方式は管理会社に工事をお任せするパターンとします。
- 管理組合運営への関心が薄い
⇨これが最大の要因です。 - 理事が輪番制
⇨大規模修繕工事は調査から工事完了まで2〜3年かかるため、
理事役員同士での引き継ぎが不十分であったり、一貫して関わる人がいない - 修繕委員を募集しても人が集まらない
- 打ち合わせを負担に感じる
⇨通常の理事会の開催頻度が低い(6回/年以下)と大規模修繕工事の検討を負担に感じてしまし、敬遠気味になるなど - 管理会社に任せた方が安心できる
⇨施工会社選定など、知識の乏しい理事役員で決めるのは責任が重いと感じるため、
多少費用は高くついたとしても、安心して任せられる方が良い
通常の理事会の議題+大規模修繕工事の検討を行うとすると1回の理事会が1〜2時間となり、
それを毎月となると負担に感じてしまうのも無理はありません。
初めての大規模修繕工事を行うマンションなどでは、現役世代(勤労世代)のため、
時間的余裕がなく、管理組合運営に注力しきれないのは致し方ない事だと思います。
マンションや管理組合の状況に応じて、適切な方式を検討することが大切です。
まとめ|大規模修繕工事の進め方を理解しておこう
マンションの大規模修繕工事には、いくつかの進め方がありますが、主に次の2つの方式が採用されています。
・設計監理方式
・責任施工方式
国土交通省の調査では、多くのマンションで設計監理方式が採用されています。
それぞれの方式にはメリットと注意点があるため、マンションの規模や管理組合の体制に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
どちらの方式を選んだからといって、大規模修繕工事が絶対に成功する、失敗するということはありません。どちらの方式を選択するにせよ、「任せきりにしない」ことが最重要です。
大規模修繕工事を成功させるためには、まず工事の進め方の違いを理解しておくことが大切といえるでしょう。

コメント