マンション大規模修繕工事の流れとは?準備から完了までを時系列でわかりやすく解説|15時限目

マンション大規模修繕工事の基礎

マンションに住んでいると、いずれ必ず訪れる「大規模修繕工事」。

ただ、

  • 何から始まるの?
  • どれくらいの期間がかかるの?
  • いつ何を決めるの?

といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、マンションの大規模修繕工事の流れを、準備から完了まで時系列でわかりやすく解説します。初めて関わる方でも全体像がつかめるよう、やさしく説明していきます。


大規模修繕工事はどれくらいの期間がかかる?

まず結論からお伝えすると、大規模修繕工事を一つのプロジェクトと考えると、検討の開始を起点として工事の竣工引渡しを完了と考えると約2年〜3年程度かかるのが一般的です。

「え、そんなに長いの?」と思われるかもしれませんが、実は時間がかかるのは工事そのものではありません。

👉 準備や検討に多くの時間をかけるのが特徴です。

工事自体は4〜6ヶ月ほどですが、それまでのプロセスがとても重要になります。
※標準的な工事内容で、30戸〜100戸程度のマンションであれば大体この期間内に収まります。
工事内容が多岐にわたる(サッシ工事や玄関ドアの改修工事を行うなど)、
団地型(2棟以上ある)、タワー型マンションの場合などは、
工事期間が6ヶ月以上かかることも珍しくありません。


ステップ①:準備・検討フェーズ(6ヶ月〜1年)

最初に行うのが、理事会を中心とした検討です。

長期修繕計画書に記載された大規模修繕工事時期が近づいてきた、
築10年目を迎える時期となってきた、
前回の大規模修繕工事から10年を超える時期となってきたなど、
上記理由により大規模修繕工事の検討について
理事会議題に上がってきます。
理事会では、

  • 修繕の必要性の確認
    ⇨建物劣化診断
  • 長期修繕計画の見直し
    ⇨資金計画の基礎資料
  • 修繕委員会の立ち上げ
    ⇨タイミングは様々ですが、初期に募集するケースもあります。

などを検討していきます。
※必ずしも上記内容を全て検討するわけではありませんが、
これらを起点としてスタートしていくことが多いです。

ここは一見地味な工程ですが、実はとても重要です。

👉 この段階で工事の方向性の大半が決まると言っても過言ではありません。

また、住民の意見がまとまりにくかったり、温度差が出たりするのもこのタイミングです。丁寧に合意形成を進めることが大切になります。


ステップ②:劣化診断(6ヶ月程度)

次に行うのが、建物の状態をチェックする「劣化診断」です。

劣化診断は準備・検討フェーズ(6ヶ月〜1年)のうち、総会で劣化診断の実施承認から、
契約〜準備〜実施〜報告書まとめ〜理事会報告(成果物納品)まで概ね6ヶ月程度を要します。

  • 外壁のひび割れ
  • 防水の劣化状況
  • 鉄部のサビ
  • 住民アンケート

などを専門家が調査し、
いま建物がどういう状況にあり、
いつ大規模修繕を実施すべきか、
どこを修繕すべきか、
どの程度修繕するべきか
を明確にします。

👉 この診断結果によって、実施時期や工事内容、費用が大きく変わります。

劣化診断については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【12時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンションの建物劣化診断とは?調査内容とチェックポイントを初心者向けに解説

ステップ③:発注方式の検討(6ヶ月程度)

大規模修繕工事では、「発注方式」の選択も重要なポイントです。

劣化診断の結果を受け、いざ大規模修繕工事の検討をスタートさせる段階になったら、
まず、発注方式について検討していきます。

発注方式については主に
「設計監理方式」と
「責任施工方式」の2つがあり、
それぞれ進め方や関係者の役割が異なります。

どちらを選ぶかによって、
工事の透明性やコスト、品質に影響が出るため、
マンションの状況や方針に合わせて慎重に検討することが大切です。

本記事では一般的に最も多く採用されている「設計監理方式」をベースとして解説していきます。

「責任施工方式」「設計監理方式」の違いについては、
こちらの記事で詳しく解説しています。
【13時限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンション大規模修繕工事の進め方|設計監理方式と責任施工方式の違いをわかりやすく解説

設計監理方式を採用する場合は、信頼できるパートナー
(設計事務所やコンサルタント、以下設計事務所等とします。)を
選定していく必要があります。

設計事務所等を選定していく際には、複数社見積もりを取得し、
場合によってはヒアリング(プレゼンテーションの場を設ける)を
実施し選定していきます。

おおよそ、発注方式の検討には6ヶ月程度は時間を要し、
最終的な設計事務所等の選定には、
総会決議が必要となってきます。

多くのマンションでは、ここまでの段階で、
検討の開始(総会で劣化診断の実施承認を得てから)から、1年程度かかります。
※劣化診断の依頼先の選定を含めたら、1年半位経過しています。


ステップ④:設計・仕様の決定(6〜8ヶ月程度)

劣化診断の結果をもとに、具体的な工事範囲・仕様を決めていきます。

  • どこを修繕するか(工事範囲)
  • どの工法、グレードの材料を採用するか(仕様)

といった内容を整理していきます。

総会で設計事務所の選定に関する承認を得た時点を起点とすると
設計業務に関しては6〜8ヶ月ほどかかります。

  • 業務委託契約の締結
  • 現地調査
  • 基本設計(工事の範囲、大まかな仕様の検討、概算金額の算出、予算の検討)
  • 実施設計(見積要項書、改修仕様書の作成)

設計に関するポイント、管理組合として注意すべきポイントは
別の記事で解説したいと思います!


ステップ⑤:施工会社の選定(4ヶ月程度)

設計内容が固まったら、施工会社の選定に進みます。

一般的には複数社から見積もりを取り、比較検討を行います。

  • 会社の概要、実績
  • 見積金額
  • その他提案内容(仮設計画、工程表、VE提案)
    ※VE提案(value engineering):品質向上に関する提案

などを総合的に判断して決定します。

ここで注意していただきたいのが、
👉 価格だけで決めてしまうのは危険です。

この工程は失敗しやすいポイントでもあるため、慎重に進める必要があります。

流れとしては、

  • 業界新聞等による公募
  • 見積依頼会社の選定
  • 見積依頼
  • 見積提出、見積比較、ヒアリング対象会社の選出
  • ヒアリングの実施
  • 施工会社の理事会内定
  • 総会承認(工事内容、工事金額、施工会社)

概ね上記工程を4ヶ月程度で行います。

目安としては、
毎月理事会を開催している組合であれば、
設計〜施工会社選定を1年の間に行います。

施工会社選定における注意ポイントについては別の記事で解説したいと思います!


ステップ⑥:工事着工〜完了(約4〜6ヶ月)

いよいよ工事がスタートします。

一般的な流れは以下の通りです。

  1. 足場の設置
  2. 下地補修
  3. 防水工事
  4. 塗装工事
  5. 仕上げ・検査

工事期間はマンションの規模にもよりますが、おおよそ4〜6ヶ月程度です。

ただし、総会で承認を得てから
すぐに工事開始となるわけではないので、
準備期間を考慮すると、
上記工事期間に3〜4ヶ月くらい加えるのが妥当だと思います。

※準備期間については、工事請負契約の締結や、
住民向けの工事説明会なども含みます。

なお、工事中は騒音や洗濯制限など、生活への影響もあります。
下記記事でも解説しています。
【11限目:マンション大規模修繕工事の基礎】マンション大規模修繕工事とは?流れ・費用・工事中の生活までわかりやすく解説


ステップ⑦:工事完了・アフター対応

施工会社の工事が終わったら、完了ではありません。

設計事務所等に発注しているとしても、
設計事務所等に全てお任せではなく発注者(=管理組合)
として大規模修繕工事の検査を行う必要があります。

  • 完了検査
  • 不具合のチェック
  • 是正工事

を行い、問題がないかを確認します。

さらに、工事後は保証期間や定期点検もあります。

管理組合としては、工事完了後の点検が確実に履行されるように監督していく必要があります。

よくある失敗と注意点【実務者目線】

ここでは、実際によくある失敗をいくつかご紹介します。

① 準備不足で進めてしまう

検討が不十分なまま進めると、後から「こんなはずじゃなかった」となりがちです。

特に、合意形成をおろそかにしたまま進めると後々話がまとまらず、
手戻りになる可能性があります。

👉 準備段階や、要所要所で区分所有者へ情報共有することが重要です。


② 業者任せにしてしまう

専門的な内容が多いため、つい任せきりになりがちです。

しかし、マンションはみなさんの資産です。

👉 自分たちで意思決定できるよう、最低限の知識を持って関わることが大切です。


③ スケジュールが遅れる

合意形成に時間がかかり、予定通り進まないケースも多くあります。

👉 余裕を持ったスケジュールを組むことがポイントです。


まとめ|成功のカギは「準備段階」にあり

大規模修繕工事というと、どうしても「工事」そのものに目が行きがちですが、
実は重要なのは「準備段階」です。

大規模修繕工事は、

  • 準備・検討(6ヶ月〜1年)
  • 劣化診断(上記に含む)
  • パートナー選定(設計事務所等)(6ヶ月)
  • 設計(6〜8ヶ月)
  • 施工会社選定(4ヶ月)
  • 工事(4〜6ヶ月)
  • アフター

という流れで進んでいきます。

今まで解説してきましたが、実際の工事期間よりも準備に
多くの時間と労力を割きます。
建設業界ではよく

「段取り八分(、仕事二分)」

と言われています。

仕事(大規模修繕工事)の成果の8割は事前の準備や計画(段取り)で決まり、
実際の作業(工事)は2割であるという言葉があります。

その言葉の通り、大規模修繕工事に置いても
最も重要なのは、最初の準備段階です。

ここでしっかり方向性を決めておくことで、
その後の工程がスムーズに進み、
結果的に満足度の高い工事につながります。


大規模修繕工事は決して簡単なものではありませんが、
流れを理解しておくだけでも不安は大きく減ります。

大規模修繕工事は、大きなお金が動くこともあり、
不正のターゲットとなることがあります。

本ブログでは、引き続き自分の資産は自分で守ることができるよう、
初心者向けにわかりやく大規模修繕工事について解説していきます。

ぜひこの記事を参考に、まずは全体像をつかんでみてください。

なお、マンション管理について体系的に知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
マンション管理の基礎|管理組合・管理会社・大規模修繕をわかりやすく解説

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